ハリーはシリウス・ブラックの暗い影のような目を覗のぞき込こんだ。落ち窪くぼんだ顔の中でただ一ヵ所、目だけが生きているようだった。ハリーは吸きゅう血けつ鬼きに出会ったことはなかったが、「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」のクラスでその絵を見たことがあった。蝋ろうのように蒼そう白はくなブラックの顔は、まさに吸血鬼そのものだった。
「おっそろしい顔じゃねーか?」ハリーが読むのを見ていたスタンが言った。
「この人、十三人も殺したの?」
新聞をスタンに返しながらハリーが聞いた。
「たった一つの呪じゅ文もんで?」
「あいな。目もく撃げき者しゃなんてぇのもいるし。真っ昼間ぴるまだ。てーした騒ぎだったなぁ、アーン?」
「あぁ」アーンが暗い声で答えた。
スタンはくるりと後ろ向きに座り、椅い子すの背に手を置いた。そのほうがハリーがよく見える。
「ブラックは『例れいのあのしと』の一の子分だった」スタンが言った。
「え? ヴォルデモートの?」ハリーは何気なく言った。
スタンはニキビまで真まっ青さおになった。アーンがいきなりハンドルを切ったので、バスを避よけるのに農家が一軒けんまるまる飛びのいた。
「気はたしかか?」スタンの声が上うわずっていた。「なんであのしとの名めえを呼んだりした?」
「ごめん」ハリーが慌あわてて言った。「ごめん。ぼ、僕ぼく――忘れてた――」
「忘れてたって!」スタンが力なく言った。「肝きもが冷えるぜ。まーだ心臓がドキドキしてやがら……」
「それで――それでブラックは『例のあの人』の支し持じ者しゃだったんだね?」
ハリーは謝あやまりながらも答えを促うながした。
「それよ」スタンはまだ胸を撫なでさすっていた。