「あー」ハーマイオニーが小声で言った。「組分けを見逃みのがしちゃった!」
ホグワーツの新入生は「組分け帽子」をかぶって、入る寮を決めてもらう。帽子が、一番ふさわしい寮の名前(グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン)を大声で発表するのだ。マクゴナガル先生は教きょう職しょく員いんテーブルの自分の席へと闊歩かっぽし、ハリーとハーマイオニーは反対方向のグリフィンドールのテーブルに、できるだけ目立たないように歩いた。大広間の後ろのほうを二人が通ると、周まわりの生徒が振り返り、ハリーを指差ゆびさす生徒も何人かいた。吸魂鬼ディメンターの前で倒れたという話が、そんなに早く伝わったのだろうか?
ロンが席を取っていてくれた。ハリーとハーマイオニーは、ロンの両りょう脇わきに座った。
「いったい何だったの?」ロンが小声でハリーに聞いた。
ハリーが耳打ちで説明をしはじめた時、校長先生が挨あい拶さつするために立ち上がったので、ハリーは話を中断した。
ダンブルドア校長は相当の年ねん齢れいだったが、いつも偉大いだいなエネルギーを感じさせた。長い銀ぎん髪ぱつと顎あご鬚ひげは一メートルあまり、半はん月げつ形がたのメガネを掛かけ、鉤かぎ鼻ばなが極きょく端たんに折れ曲がっていた。しばしば、いまの時代のもっとも偉大な魔法使いと称しょうされていたが、しかしハリーはそれだからダンブルドアを尊そん敬けいしていたのではなかった。アルバス・ダンブルドアは誰もが自然に信用したくなる気持にさせる。ハリーはダンブルドアがにっこりと生徒たちに笑いかけるのを見ながら、吸魂鬼がコンパートメントに入ってきた時以来初めて、心から安らいだ気持になっていた。