パチン! 目玉が切せつ断だんされた手首になった。裏うら返がえしになり、蟹かにのように床を這はいはじめた。
「リディクラス!」ディーンが叫んだ。
バチッと音がして、手がネズミ捕とりに挟はさまれた。
「いいぞ! ロン、次だ!」
ロンが飛び出した。
「パチン!」
何人かの生徒が悲鳴ひめいを上げた。毛むくじゃらの二メートル近い大おお蜘ぐ蛛もが、おどろおどろしく鋏はさみをガチャつかせ、ロンに向かってきた。一いっ瞬しゅん、ハリーはロンが凍こおりついたかと思った。すると――。
「リディクラス!」
ロンが轟とどろくような大声を出した。蜘蛛の脚あしが消え、ゴロゴロ転ころがりだした。ラベンダー・ブラウンが金切かなきり声ごえを出して蜘蛛を避よけた。足元で蜘蛛が止まったので、ハリーは杖つえを構かまえた。が――。
「こっちだ!」急にルーピン先生がそう叫さけび、急いで前に出てきた。
パチン!
脚なし蜘蛛が消えた。一いっ瞬しゅん、どこへ消えたのかと、みんなキョロキョロ見回した。すると、銀ぎん白はく色しょくの玉がルーピンの前に浮かんでいるのが見えた。ルーピンは、ほとんど面めん倒どうくさそうに「リディクラス!」と唱となえた。
パチン!
「ネビル! 前へ! やっつけるんだ!」
まボねガ妖ー怪トがゴキブリになって床に落ちたところでルーピンが叫んだ。パチン! スネイプが戻もどった。ネビルは今度は決けつ然ぜんとした表情でぐいと前に出た。
「リディクラス!」ネビルが叫んだ。
ほんの一瞬、レース飾かざりのドレスを着たスネイプの姿が見えたが、ネビルが大声で「ハハハ!」と笑うと、まね妖怪は破裂はれつし、何千という細い煙の筋すじになって消え去った。