「そいつをそこから動かすなよ」ロンはイライラしながらまた星せい座ざ図ずに取りかかった。
「スキャバーズが僕のカバンで寝ねてるんだから」
ハリーは欠伸あくびをした。早くベッドに行きたかった。しかし、ハリーも星座図を仕し上あげなければならない。カバンを引きよせて、羊よう皮ひ紙し、インク、羽は根ねペンを取り出し、作業に取りかかった。
「僕のを写していいよ」
最後の星に、どうだ、とばかりに大げさに名前を書き、その図をハリーのほうに押しやった。
ハーマイオニーは丸写しが許せず、唇くちびるをぎゅっと結んだが、何も言わなかった。クルックシャンクスは、ぼさぼさの尻尾しっぽを振り振り、瞬まばたきもせずにロンを見つめ続けていたが、出し抜けに跳とんだ。
「おい!」ロンが喚わめきながらカバンを引っつかんだが、クルックシャンクスは四本脚あしの爪つめ全部を、ロンのカバンに深々と食い込ませ、猛もう烈れつに引ひっ掻かきだした。
「はなせ! この野郎!」ロンはクルックシャンクスからカバンをもぎ取ろうとしたが、クルックシャンクスはシャーッシャーッと唸うなり、カバンを引き裂さき、てこでも離はなれない。
「ロン、乱暴しないで!」ハーマイオニーが悲鳴ひめいをあげた。
談だん話わ室しつの生徒がこぞって見物した。ロンはカバンを振り回したが、クルックシャンクスはぴったり張はりついたままで、スキャバーズのほうがカバンからポーンと飛び出した――。
「あの猫を捕つかまえろ!」ロンが叫さけんだ。
クルックシャンクスは抜ぬけ殻がらのカバンを離れ、テーブルに飛び移り、命からがら逃げるスキャバーズのあとを追った。
ジョージ・ウィーズリーがクルックシャンクスを取っ捕まえようと手を伸ばしたが、取り逃した。スキャバーズは二十人の股またの下をすり抜け、古い整せい理り箪だん笥すの下に潜もぐり込こんだ。クルックシャンクスはその前で、急きゅう停てい止しし、ガニ股またの脚を曲げて屈かがみ込み、前脚を箪笥の下に差し入れて烈はげしく掻いた。
ロンとハーマイオニーが駆かけつけた。ハーマイオニーはクルックシャンクスの腹を抱かかえ、ウンウン言って引き離した。ロンはベッタリ腹這はらばいになり、さんざんてこずったが、スキャバーズの尻尾しっぽをつかんで引ひっ張ぱり出した。