「見ろよ!」
ロンはカンカンになって、スキャバーズをハーマイオニーの目の前にぶら下げた。
「こんなに骨と皮になって! その猫をスキャバーズに近づけるな!」
「クルックシャンクスにはそれが悪いことだってわからないのよ!」ハーマイオニーは声を震ふるわせた。「ロン、猫はネズミを追っかけるもんだわ!」
「そのケダモノ、何かおかしいぜ!」
ロンは、必死ひっしにじたばたしているスキャバーズを、なだめすかしてポケットに戻もどそうとしていた。
「スキャバーズは僕ぼくのカバンの中だって言ったのを、そいつ聞いたんだ!」
「バカなこと言わないで」ハーマイオニーが切り返した。「クルックシャンクスは臭においでわかるのよ、ロン。ほかにどうやって――」
「その猫、スキャバーズに恨うらみがあるんだ!」
周まわりの野や次じ馬うまがクスクス笑い出したが、ロンはおかまいなしだ。
「いいか、スキャバーズのほうが先せん輩ぱいなんだぜ。その上、病気なんだ!」
ロンは肩をいからせて談だん話わ室しつを横切り、寝しん室しつに向かう階段へと姿を消した。
翌よく日じつもまだ、ロンは険けん悪あくなムードだった。「植しょく物ぶつ学がく」の時間中も、ハリーとハーマイオニーとロンが一いっ緒しょに「花咲はなさか豆まめ」の作業をしていたのに、ロンはほとんどハーマイオニーと口を利きかなかった。
豆の木からふっくらしたピンクの莢さやをむしり取り、中から艶つや々つやした豆を押し出して桶おけに入れながら、ハーマイオニーがおずおずと聞いた。
「スキャバーズはどう?」
「隠れてるよ。僕のベッドの奥で、震ふるえながらね」
ロンは腹を立てていたので、豆が桶に入らず、温室の床に散らばった。
「気をつけて、ウィーズリー。気をつけなさい!」
スプラウト先生が叫さけんだ。豆がみんなの目の前でパッと花を咲かせはじめたのだ。