パーシーは少し恥じ入った様子だった。ダンブルドアは足あし早ばやにそっと大おお広ひろ間まを出ていった。スネイプはその場にたたずみ、憤ふん懣まんやる方かたない表情で、校長を見送っていたが、やがて自分も部屋を出ていった。
ハリーが横目でロンとハーマイオニーを見ると、二人とも目を開けていた。二人の目に天てん井じょうの星が映うつっていた。
「いったい何のことだろう」ロンがつぶやいた。
それから数日というもの、学校中シリウス・ブラックの話で持ちきりだった。どうやって城に入り込こんだのか、話に尾ひれがついてどんどん大きくなった。ハッフルパフのハンナ・アボットときたら、「薬やく草そう学がく」の時間中ずっと、話を聞いてくれる人を捕つかまえては、ブラックは花の咲さく灌かん木ぼくに変身できるのだとしゃべりまくった。
切り刻きざまれた「太った婦人レディ」の肖しょう像ぞう画がは壁かべから取りはずされ、代わりにずんぐりした灰色のポニーに跨またがった「カドガン卿きょう」の肖像画が掛かけられた。これにはみんな大弱りだった。カドガン卿は誰かれかまわず決けっ闘とうを挑いどんだし、そうでなければ、とてつもなく複ふく雑ざつな合あい言こと葉ばをひねり出すのに余念よねんがなかった。そして少なくとも一日二回は合言葉を変えた。
「あの人、超チョー狂ってるよ」シェーマス・フィネガンが頭にきてパーシーに訴うったえた。
「ほかに人はいないの?」
「どの絵もこの仕事を嫌きらったんでね」パーシーが言った。「『太った婦人レディ』にあんなことがあったから、みんな怖こわがって、名乗り出る勇気があったのはカドガン卿だけだったんだ」
しかし、ハリーはカドガン卿を気にするどころではなかった。いまやハリーを監視かんしする目が大変だった。先生方は何かと理由をつけてはハリーと一いっ緒しょに廊下ろうかを歩いたし、パーシー・ウィーズリーは(ハリーの察さっするところ、母親の言いつけなのだろうが)、ハリーの行くところはどこにでもぴったりついてきた。まるでふん反り返った番犬のようだった。極きわめつきは、マクゴナガル先生だった。自分の部屋にハリーを呼んだ時、先生があまりに暗い顔をしているので、ハリーは誰かが死んだのかと思ったぐらいだった。