「ポッター、いまとなっては隠していてもしょうがありません」
マクゴナガル先生の声は深しん刻こくそのものだった。
「あなたにとってはショックかもしれませんが、実はシリウス・ブラックは――」
「僕ぼくを狙ねらっていることは知っています」ハリーはもううんざりだという口く調ちょうで言った。
「ロンのお父さんが、お母さんに話しているのを聞いてしまいました。ウィーズリーさんは魔ま法ほう省しょうにお勤つとめですから」
マクゴナガル先生はドキリとした様子だった。一いっ瞬しゅんハリーを見つめたが、すぐに言葉を続けた。
「よろしい! それでしたら、ポッター、あなたが夕ゆう刻こくにクィディッチの練習をするのはあまり好このましいことではない、という私わたくしの考えがわかってもらえるでしょうね。あなたとチームのメンバーだけがピッチに出ているのは、あまりに危険きけんですし、あなたは――」
「土曜日に最初の試合があるんです!」ハリーは気を昂たかぶらせた。
「先生、絶ぜっ対たい練習しないと!」
マクゴナガル先生はじっとハリーを見つめた。ハリーは、マクゴナガル先生がグリフィンドール・チームの勝しょう算さんに、大きな関心をよせていることを知っていた。そもそもハリーをシーカーにしたのは、マクゴナガル先生自身なのだ。ハリーは息を凝こらして先生の言葉を待った。
「フム……」
マクゴナガル先生は立ち上がり、窓から雨に霞かすむクィディッチ競きょう技ぎ場じょうを見つめた。
「そう……まったく、今度こそ優ゆう勝しょう杯はいを獲かく得とくしたいものです。……しかし、それはそれ、これはこれ。ポッター……私わたくしとしては、誰か先生につき添そっていただければより安心です。フーチ先生に練習の監かん督とくをしていただきましょう」