「命に別べつ状じょうはない」別状があればいいのにとでも言いたげだった。
「グリフィンドール、さらに五点減点。もう一度我わが輩はいに『座れ』と言わせたら、五十点減点する」
ハリーはのろのろと自分の席まで歩いていき、腰を掛かけた。スネイプはクラスをずいと見回した。
「ポッターが邪魔じゃまをする前に話していたことであるが、ルーピン先生はこれまでどのような内容を教えたのか、まったく記録きろくを残していないからして――」
「先生、これまでやったのは、まボねガ妖ー怪ト、赤帽鬼レッドキャップ、河童カッパ、水魔グリンデローです」
ハーマイオニーが一気に答えた。
「これからやる予定だったのは――」
「黙だまれ」スネイプが冷たく言った。「教えてくれと言ったわけではない。我わが輩はいはただ、ルーピン先生のだらしなさを指摘してきしただけである」
「ルーピン先生はこれまでの『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の先生の中で一番よい先生です」
ディーン・トーマスの勇ゆう敢かんな発言を、クラス中がガヤガヤと支し持じした。スネイプの顔がいっそう威い嚇かく的てきになった。
「点の甘あまいことよ。ルーピンは諸しょ君くんに対して著いちじるしく厳きびしさに欠ける。――赤帽鬼レッドキャップや水魔グリンデローなど、一年坊主ぼうずでもできることだろう。我われ々われが今日学ぶのは――」
ハリーが見ていると、スネイプ先生は教科書の一番後ろまでページをめくっていた。ここなら生徒はまだ習っていないと知っているに違いない。
「――人じん狼ろうである」とスネイプが言った。
「でも、先生」ハーマイオニーは我慢がまんできずに発言した。
「まだ狼おおかみ人にん間げんまでやる予定ではありません。これからやる予定なのは、ヒンキーパンクで――」
「ミス・グレンジャー」スネイプの声は恐ろしく静かだった。
「この授じゅ業ぎょうは我輩が教えているのであり、君ではないはずだが。その我輩が、諸君に三九四ページをめくるようにと言っているのだ」
スネイプはもう一度ずいとクラスを見回した。
「全員! いますぐだ!」
あちこちで苦にが々にがしげに目配めくばせが交かわされ、ブツブツ文句もんくを言う生徒もいたが、全員が教科書を開いた。