「人狼と真の狼おおかみとをどうやって見分けるか、わかる者はいるか?」スネイプが聞いた。
みんなしーんと身動きもせず座り込こんだままだった。ハーマイオニーだけが、いつものように勢いよく手を挙あげた。
「誰かいるか?」
スネイプはハーマイオニーを無む視しした。口元にはあの薄うすら笑いが戻もどっている。
「すると、何かね。ルーピン先生は諸君に、基本的な両者の区別さえまだ教えていないと――」
「お話ししたはずです」パーバティが突とつ然ぜん口を利きいた。
「わたしたち、まだ狼人間までいってません。いまはまだ――」
「黙れ!」スネイプの唇くちびるがめくれ上がった。
「さて、さて、さて、三年生にもなって、人狼に出会っても見分けもつかない生徒にお目にかかろうとは、我輩は考えてもみなかった。諸君の学習がどんなに遅おくれているか、ダンブルドア校長にしっかりお伝えしておこう」
「先生」ハーマイオニーは、まだしっかり手を挙あげたままだった。
「狼おおかみ人にん間げんはいくつか細かいところで本当の狼と違っています。狼人間の鼻はな面づらは――」
「勝手にしゃしゃり出てきたのはこれで二度目だ。ミス・グレンジャー」冷ひややかにスネイプが言った。「鼻持はなもちならない知ったかぶりで、グリフィンドールからさらに五点減げん点てんする」
ハーマイオニーは真まっ赤かになって手を下ろし、目に涙をいっぱい浮かべてじっとうつむいた。クラスの誰もが、少なくとも一度はハーマイオニーを「知ったかぶり」と呼んでいる。それなのに、みんながスネイプを睨にらみつけた。クラス中の生徒が、スネイプに対する嫌けん悪お感かんを募つのらせたのだ。ロンは少なくとも週に二回はハーマイオニーに面と向かって「知ったかぶり」と言うくせに、大声でこう言った。
「先生はクラスに質問を出したじゃないですか。ハーマイオニーが答えを知ってたんだ! 答えてほしくないんなら、なんで質問したんですか?」
言いすぎた、とみんながとっさにそう思った。クラス中が息をひそめる中、スネイプはじりじりとロンに近づいた。