「君のことをロンがいろいろ言うのは、たしかに当たってると思うよ」
ハリーは、クルックシャンクスを怪あやしむように話しかけた。
「ネズミならほかにたくさんいるじゃないか。そっちを追いかけろよ。さあ」
ハリーは足でクルックシャンクスを螺旋らせん階段のほうに押しやった。
「スキャバーズには手を出すんじゃないよ」
嵐あらしの音は談だん話わ室しつのほうがはっきり聞こえた。試合がキャンセルになると考えるほどハリーは甘あまくはなかった。嵐だろうが、雷かみなりだろうが、そんな些細ささいなことでクィディッチが中止されたことはない。しかし、ハリーの不安感は募つのった。ウッドが以前廊下ろうかで、あれがセドリック・ディゴリーだと教えてくれた。五年生で、ハリーよりずっと大きかった。シーカーは軽くて素早すばやいのが普通だが、ディゴリーの重さはこの天てん候こうでは有利かもしれない。吹き飛ばされてコースをはずれる可か能のう性せいが低いからだ。
ハリーは夜明けまで暖炉だんろの前で時間をつぶし、ときどき立ち上がっては、性しょう懲こりもなく男子寮りょうの階段に忍しのびよるクルックシャンクスを押さえていた。ずいぶん経たってから、ハリーはもう朝食の時間だろうと思い、肖しょう像ぞう画がの穴を一人でくぐっていった。
「立て! かかってこい! 腰抜こしぬけめ!」カドガン卿きょうが喚わめいた。
「よしてくれよ」ハリーは欠伸あくびで応じた。
オートミールをたっぷり食べると少し生き返った。トーストを食べはじめるころには、他のチーム・メイトも全員現れた。
「今日はてこずるぞ」ウッドは何にも食べずにそう言った。
「オリバー、心配するのはやめて」アリシアがなだめるように言った。
「ちょっとぐらいの雨はへいちゃらよ」