五分もすると、ハリーは芯しんまでびしょ濡ぬれになり、凍こごえていた。他のチーム・メイトはほとんど見えず、ましてや小さなスニッチなど見えるわけがなかった。ピッチの上空をあっちへ飛び、こっちへ飛び、輪りん郭かくのぼやけた紅色やら黄色やらの物体の間を抜けながら飛んだ。いったい試合がどうなっているのかもわからない。解かい説せつ者しゃの声は風で聞こえはしなかった。観衆はマントや破れ傘に隠れて見えはしない。ブラッジャーが二度、ハリーを箒から叩たたき落としそうになった。メガネが雨で曇り、ブラッジャーの襲しゅう撃げきが見えなかったのだ。
時間の感覚がなくなった。箒をまっすぐ持っているのがだんだん難むずかしくなった。まるで夜が足を速めてやってきたかのように、空はますます暗くなっていった。二度、ハリーは他の選手にぶつかりそうになった。敵か味方かもわからなかった。なにしろみんなぐしょ濡ぬれだし、雨はどしゃ降ぶりだしで、ハリーには選手の見分けがつかなかった。
最初の稲いな妻ずまが光った時、フーチ先生のホイッスルが鳴り響ひびいた。どしゃ降りの雨の向こう側に、辛かろうじてウッドのおぼろげな輪りん郭かくが見えた。ハリーにピッチに下りてこいと合図あいずしている。チーム全員が泥どろの中にバシャッと着地した。
「タイム・アウトを要求した!」ウッドが吠ほえるように言った。「集まれ。この下に――」
ピッチの片かた隅すみの大きな傘かさの下で、選手がスクラムを組んだ。ハリーはメガネをはずしてユニフォームで手早く拭ぬぐった。
「スコアはどうなっているの?」
「我われ々われが五十点リードだ。だが、早くスニッチを取らないと夜にもつれ込こむぞ」とウッドが言った。