何をすればいいんだろう? 地図をまた取り出して見ると、驚いたことに、もう一つ、人の形をした黒い点が現れていて、「ハリー・ポッター」と名前が書いてあった。その小さな人ひと影かげはちょうどハリーが立っているあたり、四階の廊下ろうかの真ん中あたりに立っていた。ハリーが見つめていると、小さな黒い自分の姿が、小さな杖つえで魔女の像を軽く叩たたいているようだった。ハリーも急いで本物の自分の杖を出し、像を叩いてみた。何事も起こらない。もう一度地図を見ると、自分の小さな影からかわいらしい小さな泡あわのようなものが吹き出し、その中に言葉が現れた。「ディセンディウム、降下こうか」と。
「ディセンディウム! 降下こうか!」
もう一度杖で石せき像ぞうを叩きながら、ハリーは囁ささやいた。
たちまち像のコブが割れ、かなり細身ほそみの人間が一人通れるくらいの割れ目ができた。ハリーは素早すばやく廊下の端はしから端まで見渡みわたし、それから地図をしまい込み、身を乗り出すようにして頭から割れ目に突っ込み、体を押し込んでいった。
まるで石の滑すべり台を滑るように、ハリーはかなりの距きょ離りを滑り降おり、湿った冷たい地面に着地した。立ち上がってあたりを見回したが、真っ暗だった。杖を掲かかげ、「ルーモス! 光よ!」と呪じゅ文もんを唱となえて見ると、そこは天てん井じょうの低い、かなり狭い土のトンネルの中だった。ハリーは地図を掲げ、杖の先で軽く叩き、呪文を唱えた。
「いたずら完了!」
地図はすぐさま消えた。ハリーは丁てい寧ねいにそれをたたみ、ローブの中にしまい込むと、興こう奮ふんと不安で胸をドキドキさせながら歩きだした。
トンネルは曲がりくねっていた。どちらかといえば大きなウサギの巣穴すあなのようだった。杖を先に突き出し、ときどき凸でこ凹ぼこの道に躓つまずきながら、ハリーは急いで歩いた。