「僕ぼく、渡さない!」ハリーが言った。
「気は確かかよ?」
ロンが目をむいてハーマイオニーを見た。
「こんないいものが渡せるか?」
「僕がこれを渡したら、どこで手に入れたか言わないといけない! フレッドとジョージがちょろまかしたってことがフィルチに知れてしまうじゃないか!」
「それじゃ、シリウス・ブラックのことはどうするの?」ハーマイオニーが口を尖とがらせた。
「この地図にある抜け道のどれかを使ってブラックが城に入り込こんでいるかもしれないのよ! 先生方はそのことを知らないといけないわ!」
「ブラックが抜け道から入り込むはずはない」ハリーがすぐに言い返した。
「この地図には七つのトンネルが書いてある。いいかい? フレッドとジョージの考えでは、そのうち四つはフィルチがもう知っている。残りは三本だ。――一つは崩くずれているから誰も通り抜けられない。もう一本は出入口の真上に『暴あばれ柳やなぎ』が植うわってるから、出られやしない。三本目は僕がいま通ってきた道――ウン――出入口はここの地下室にあって、なかなか見つかりゃしない。――出入口がそこにあるって知ってれば別だけど――」
ハリーはちょっと口ごもった。そこに抜け道があるとブラックが知っていたとしたら?
ロンが意味ありげに咳せき払ばらいし、店の出入口のドアの内側に貼はりつけてある掲けい示じを指差ゆびさした。
魔ま法ほう省しょうよりのお達たっし
お客様へ
先せん般ぱんお知らせいたしましたように、日にち没ぼつ後ご、ホグズミードの街路がいろには毎まい晩ばん吸魂鬼ディメンターのパトロールが入ります。この措そ置ちはホグズミード住人の安全のためにとられたものであり、シリウス・ブラックが逮捕たいほされるまで続きます。お客様におかれましては、買物を暗くならないうちにお済すませくださいますようお勧すすめいたします。
メリー・クリスマス!