「ね?」ロンがそっと言った。「吸魂鬼がこの村にわんさか集まるんだぜ。ブラックがハニーデュークス店に押し入ったりするのを拝はい見けんしたいもんだ。それに、ハーマイオニー、ハニーデュークスのオーナーが物音に気づくだろう? だってみんな店の上に住んでるんだ!」
「そりゃそうだけど――でも――」
ハーマイオニーはなんとか他の理由を考えているようだった。
「ねえ、ハリーはやっぱりホグズミードに来ちゃいけないはずでしょ。許可きょか証しょうにサインをもらっていないんだから! 誰かに見つかったら、それこそ大変よ! それに、まだ暗くなってないし――今日シリウス・ブラックが現れたらどうするの? たったいま?」
「こんな時にハリーを見つけるのは大仕事だろうさ」
格子こうし窓まどの向こうに吹き荒れる大雪を顎あごでしゃくりながら、ロンが言った。
「いいじゃないか、ハーマイオニー、クリスマスだぜ。ハリーだって楽しまなきゃ」
ハーマイオニーは、心配でたまらないという顔で、唇くちびるを噛かんだ。
「僕ぼくのこと、言いつける?」ハリーがニヤッと笑ってハーマイオニーを見た。
「まあ――そんなことしないわよ。――でも、ねえ、ハリー――」
「ハリー、『フィフィ・フィズビー』を見たかい?」
ロンはハリーの腕うでをつかんで樽たるの方に引ひっ張ぱっていった。
「『ナメクジ・ゼリー』は? 酸すっぱい『ペロペロ酸さん飴あめ』は? この飴、僕が七つの時フレッドがくれたんだ。――そしたら僕、酸で舌にぽっかり穴が開いちゃってさ。ママが箒ほうきでフレッドを叩たたいたのを覚えてるよ」
ロンは思いにふけって「ペロペロ酸飴」の箱を見つめた。
「『ゴキブリ・ゴソゴソ豆まめ板いた』を持っていって、ピーナッツだって言ったら、フレッドがかじると思うかい?」
ロンとハーマイオニーが菓子の代金を払い、三人はハニーデュークス店をあとにし、吹雪ふぶきの中を歩きだした。