マクゴナガル先生とフリットウィック先生が、舞まい上がる雪に包まれてパブに入ってきたのだ。すぐ後ろにハグリッドが入ってきた。ハグリッドはライム色の山やま高たか帽ぼうに細ほそ縞じまのマントをまとったでっぷりした男と話に夢む中ちゅうになっている。コーネリウス・ファッジ、魔法まほう大だい臣じんだ。
とっさに、ロンとハーマイオニーが同時にハリーの頭のてっぺんに手を置いて、ハリーをぐいっとテーブルの下に押し込んだ。ハリーは椅い子すから滑すべり落ち、こぼれたバタービールをボタボタ垂たらしながら机の下にうずくまった。空からになった大ジョッキを手に、ハリーは先生方とファッジの足を見つめた。足はバーのほうに動き、立ち止まり、方向を変えてまっすぐハリーのほうへ歩いてきた。
どこか頭の上のほうで、ハーマイオニーがつぶやくのが聞こえた。
「モビリアーブス! 木よ動け!」
そばにあったクリスマス・ツリーが十センチほど浮き上がり、横にふわふわ漂ただよって、ハリーたちのテーブルの真ん前にトンと軽い音をたてて着地し、三人を隠した。ツリーの下のほうの茂った枝の間から、ハリーはすぐそばのテーブルの四組の椅い子すの脚あしが後ろに引かれるのを見ていた。やがて先生方も大だい臣じんも椅子に座り、フーッというため息や、やれやれという声が聞こえてきた。
次にハリーが見たのはもう一ひと組くみの足で、ぴかぴかのトルコ石色のハイヒールを履はいていた。女性の声がした。
「ギリーウォーターのシングルです――」
「私わたくしです」マクゴナガル先生の声。
「ホット蜂はち蜜みつ酒しゅ 四ジョッキ分ぶん――」
「ほい、ロスメルタ」ハグリッドだ。
「アイスさくらんぼシロップソーダ、唐から傘かさ飾かざりつき――」
「ムムム!」フリットウィック先生が唇くちびるを尖とがらせて舌した鼓つづみを打った。
「それじゃ、大臣は紅あかい実みのラム酒ですね?」
「ありがとうよ、ロスメルタのママさん」ファッジの声だ。
「君にまた会えてほんとにうれしいよ。君も一いっ杯ぱいやってくれ……こっちに来て一いっ緒しょに飲まないか?」
「まあ、大臣、光栄ですわ」