ハグリッドの話のあとは長い沈ちん黙もくが続いた。それから、マダム・ロスメルタがやや満足げに言った。
「でも、逃げ遂おおせなかったわね? 魔法省が次の日に追いつめたわ!」
「あぁ、魔法省だったらよかったのだが!」ファッジが口惜くちおしげに言った。
「ヤツを見つけたのは我われ々われではなく、チビのピーター・ペティグリューだった。――ポッター夫妻ふさいの友人の一人だが。悲しみで頭がおかしくなったのだろう。たぶんな。ブラックがポッターの『秘密の守人』だと知っていたペティグリューは、自みずからブラックを追った」
「ペティグリュー……ホグワーツにいたころはいつも二人のあとにくっついていたあの肥ふとった小さな男の子かしら?」マダム・ロスメルタが聞いた。
「ブラックとポッターのことを英雄のように崇あがめていた子だった」
マクゴナガル先生が言った。
「能力から言って、あの二人の仲間にはなりえなかった子です。私わたくし、あの子には時に厳きびしくあたりましたわ。私わたくしがいまどんなにそれを――どんなに悔くいているか……」
マクゴナガル先生は急に鼻かぜを引いたような声になった。
「さあ、さあ、ミネルバ」ファッジがやさしく声をかけた。
「ペティグリューは英雄として死んだ。目もく撃げき者しゃの証しょう言げんでは――もちろんこのマグルたちの記き憶おくはあとで消しておいたがね。――ペティグリューはブラックを追いつめた。泣きながら『リリーとジェームズが。シリウス! よくもそんなことを!』と言っていたそうだ。それから杖つえを取り出そうとした。まあ、もちろん、ブラックのほうが速かった。ペティグリューは木こっ端ぱ微塵みじんに吹っ飛ばされてしまった……」
マクゴナガル先生はチンと鼻をかみ、かすれた声で言った。
「バカな子……間ま抜ぬけな子……どうしようもなく決けっ闘とうがへたな子でしたわ。……魔法まほう省しょうに任まかせるべきでした……」
「俺おれなら、俺がペティグリューのチビより先にヤツと対決してたら、杖つえなんかもたもた出さねえぞ。――ヤツを引っこ抜いて――バラバラに――八やつ裂ざきに――」ハグリッドが吼ほえた。