どうやってハニーデュークス店の地下室までたどり着き、どうやってトンネルを抜け、また城へと戻もどったのか、ハリーははっきり覚えていない。帰き路ろはまったく時間がかからなかったような気がしたことだけは覚えている。頭の中で聞いたばかりの会話がガンガン鳴り響ひびき、自分が何をしているのか、ほとんど意識いしきがなかった。
どうして誰も何にも教えてくれなかったのだろう? ダンブルドア、ハグリッド、ウィーズリー氏、コーネリウス・ファッジ……どうして誰も、ハリーの両親が、無む二にの親友の裏切うらぎりで死んだという事実を話してくれなかったんだろう?
夕食の間中、ロンとハーマイオニーはハリーを気遣きづかわしげに見守った。すぐそばにパーシーがいたので、とても漏もれ聞いた会話のことを話しだせなかったのだ。階段を上り、混こみ合った談だん話わ室しつに戻ると、フレッドとジョージが、学期末のお祭り気分で、半ダースもの「クソ爆ばく弾だん」を爆発させたところだった。ホグズミードに無事着いたかどうか、双子ふたごに質問されたくなかったので、ハリーはこっそり寝しん室しつに戻った。誰もいない寝室で、ハリーはまっすぐベッド脇わきの書しょ類るい棚だなに向かった。教科書を脇によけると、探し物はすぐ見つかった。――ハグリッドが二年前にくれた革かわ表びょう紙しのアルバムだ。父親と母親の魔法写真がぎっしり貼はってある。ベッドに座り、周まわりのカーテンをぐるりと閉め、ページをめくりはじめた。探しているのは……。
両親の結婚の日の写真でハリーは手を止めた。父親がハリーに向かってにっこり笑いかけながら手を振っている。ハリーに遺伝いでんしたくしゃくしゃな黒くろ髪かみが、勝手な方向にピンピン飛び出している。母親もいた。父さんと腕うでを組み、幸せで輝かがやいている。そして……。
この人に違いない。花はな婿むこ付つき添そい人にん……この人のことを一度も考えたことはなかった。