「こいつを雪ん中につないで放ほうっておけねえ」ハグリッドが喉を詰まらせた。
「たった一人で! クリスマスだっちゅうのに!」
ハリー、ロン、ハーマイオニーは互いに顔を見合わせた。ハグリッドが「おもしろい生き物」と呼び、他の人が「恐ろしい怪物」と呼ぶものについて、三人はハグリッドと意見がぴったり合ったためしがない。しかし、バックビークがとくに危害きがいを加えるとは思えない。事実、いつものハグリッドの基き準じゅんから見て、この動物はむしろかわいらしい。
「ハグリッド、しっかりした強い弁護べんごを打ち出さないといけないわ」
ハーマイオニーは腰掛かけてハグリッドの小山のような腕うでに手を置いて言った。
「バックビークが安全だって、あなたがきっと証しょう明めいできるわ」
「そんでも、同じこった」ハグリッドがすすり上げた。
「やつら、処しょ理り屋やの悪魔め、連中はルシウス・マルフォイの手の内だ! やつを怖こわがっとる! もし俺おれが裁さい判ばんで負けたら、バックビークは――」
ハグリッドは喉をかき切るように、指をさっと動かした。それからひと声大泣きし、前のめりになって両腕に顔を埋うずめた。
「ダンブルドアはどうなの、ハグリッド?」ハリーが聞いた。
「あの方かたは、俺のためにもう十分すぎるほどやりなすった」
ハグリッドは呻うめくように言った。
「手て一いっ杯ぱいでおいでなさる。吸魂鬼ディメンターのやつらが城の中さ入らんようにしとくとか、シリウス・ブラックがうろうろとか――」
ロンとハーマイオニーは、急いでハリーを見た。ブラックのことで本当のことを話してくれなかったと、ハリーがハグリッドを激はげしく責せめはじめるだろうと思ったかのようだ。しかし、ハリーはそこまではできなかった。ハグリッドがこんなに惨みじめで、こんなに打ち震ふるえているのを見てしまったいまは、できはしない。