「そいつをここに連れてくるなよ!」
ロンは急いでベッドの奥からスキャバーズを拾い上げ、パジャマのポケットにしまい込こんだ。しかし、ハーマイオニーは聞いていなかった。クルックシャンクスを空あいているシェーマスのベッドに落とし、口をあんぐり開けてファイアボルトを見つめた。
「まあ、ハリー! いったい誰がこれを?」
「さっぱりわからない」ハリーが答えた。「カードも何にもついてないんだ」
驚いたことに、ハーマイオニーは興こう奮ふんもせず、この出で来き事ごとに興きょう味みをそそられた様子もない。それどころか顔を曇くもらせ、唇くちびるを噛かんだ。
「どうかしたのかい?」ロンが聞いた。
「わからないわ」ハーマイオニーは何かを考えていた。
「でも、何かおかしくない? つまり、この箒ほうきは相当いい箒なんでしょう? 違う?」
ロンが憤ふん然ぜんとしてため息をついた。
「ハーマイオニー、これは現げん存そんする箒の最さい高こう峰ほうだ」
「なら、とっても高いはずよね……」
「たぶん、スリザリンの箒全部を束たばにしてもかなわないぐらい高い」
ロンはうれしそうに言った。
「そうね……そんなに高価こうかなものをハリーに送って、しかも自分が送ったってことを教えもしない人って、誰なの?」ハーマイオニーが言った。
「誰だっていいじゃないか」ロンはイライラしていた。
「ねえ、ハリー、僕ぼく、試ためしに乗ってみてもいい? どう?」
「まだよ。まだ絶ぜっ対たい誰もその箒に乗っちゃいけないわ!」ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを出した。
ハリーもロンもハーマイオニーを見た。
「この箒でハリーが何をすればいいって言うんだい。――床でも掃はくかい?」ロンだ。
ところが、ハーマイオニーが答える前に、クルックシャンクスがシェーマスのベッドから飛び出し、ロンの懐ふところを直ちょく撃げきした。