「こいつを――ここ――から――連れ出せ!」
ロンが大声を出した。クルックシャンクスの爪つめがロンのパジャマを引き裂さき、スキャバーズは無む我が夢む中ちゅうでロンの肩を乗り越こえて、逃とう亡ぼうを図はかった。ロンはスキャバーズの尻尾しっぽをつかみ、同時にクルックシャンクスを蹴け飛とばしたはずだったが、狙ねらいが狂ってハリーのベッドの端はしにあったトランクを蹴飛ばした。トランクは引っくり返り、ロンは痛さのあまり叫さけびながら、その場でピョンピョン跳とび上がった。
クルックシャンクスの毛が急に逆立さかだった。ヒュンヒュンという小さな甲かん高だかい音が部屋中に響ひびいた。携帯かくれん防止器スニーコスコープが、バーノンおじさんの古ふる靴くつ下したから転ころがり出て、床の上でピカピカ光りながら回っていた。
「これを忘れてた!」
ハリーは屈かがんでスニーコスコープを拾い上げた。
「この靴くつ下したはできれば履はきたくないもの……」
スニーコスコープはハリーの手の中で鋭するどい音をたてながらぐるぐる回り、クルックシャンクスがそれに向かって歯をむき出し、フーッ、フーッと唸うなった。
「ハーマイオニー、その猫、ここから連れ出せよ」
ロンはハリーのベッドの上で爪つま先さきをさすりながら、カンカンになって言った。黄色い目で意い地じ悪わるくロンを睨にらんだままのクルックシャンクスを連れて、ハーマイオニーはつんつんしながら部屋を出ていった。
「そいつを黙だまらせられないか?」ロンが、今度はハリーに向かって言った。
ハリーは携帯かくれん防止器をまた古靴下の中に詰つめ、トランクに投げ入れた。聞こえるのは、ロンが痛みと怒りとで呻うめく声だけになった。スキャバーズはロンの手の中で丸くなって縮ちぢこまっていた。ロンのポケットから出てきたのを、ハリーが見たのは久しぶりだった。かつてはあんなに太っていたスキャバーズが、いまややせ衰おとろえて、あちこち毛が抜け落ちているのを見て、ハリーは驚きもし、痛々しくも思った。
「あんまり元気そうじゃないね、どう?」ハリーが言った。
「ストレスだよ! あのでっかい毛玉のバカが、こいつを放ほっといてくれれば大だい丈じょう夫ぶなんだ!」