ハリーは「魔ま法ほう動どう物ぶつペットショップ」の魔女が、ネズミは三年しか生きないと言ったことを思い出していた。スキャバーズがいままで見せたことのない力を持っているなら別だが、そうでなければ、もう寿じゅ命みょうが尽つきようとしているのだと感じないわけにはいかなかった。ロンは、スキャバーズが退たい屈くつな役立たずだとしょっちゅうこぼしていたが、もしスキャバーズが死んでしまったら、どんなに嘆なげくだろうとハリーは思った。
その日の朝のグリフィンドール談だん話わ室しつは、クリスマスの慈愛じあいの心が地に満ち溢あふれ、というわけにはいかなかった。ハーマイオニーはクルックシャンクスを自分の寝しん室しつに閉じ込こめはしたが、ロンが蹴け飛とばそうとしたことに腹を立てていた。ロンのほうは、クルックシャンクスがまたもやスキャバーズを襲おそおうとしたことで湯ゆ気げを立てて怒っていた。ハリーは二人が互いに口を利きくようにしようと努力することも諦あきらめ、談話室に持ってきたファイアボルトをしげしげ眺ながめることに没ぼっ頭とうした。これがまたなぜか、ハーマイオニーの癇かんに障さわったらしい。何も言わなかったが、ハーマイオニーはまるで箒ほうきも自分の猫を批判ひはんしたと言わんばかりに、不快そうにちらちら箒を見ていた。
昼食に大おお広ひろ間まに下りていくと、各かく寮りょうのテーブルはまた壁かべに立て掛かけられ、広間の中央にテーブルが一つ、食器が十二人分用意されていた。ダンブルドア、マクゴナガル、スネイプ、スプラウト、フリットウィックの諸しょ先生が並び、管かん理り人にんのフィルチも、いつもの茶色の上着ではなく、古びたかび臭くさい燕えん尾び服ふくを着て座っている。生徒はハリーたちの他に三人しかいない。緊きん張ちょうでガチガチの一年生が二人、ふてくされた顔のスリザリンの五年生が一人だ。
「メリー・クリスマス!」
ハリー、ロン、ハーマイオニーがテーブルに近づくと、ダンブルドア先生が挨あい拶さつした。
「これしかいないのだから、寮りょうのテーブルを使うのはいかにも愚おろかに見えたのでのう。……さあ、お座り! お座り!」
ハリー、ロン、ハーマイオニーはテーブルの隅すみに並んで座った。