「クラッカーを!」
ダンブルドアが、はしゃいで、大きな銀色のクラッカーの紐ひもの端はしをスネイプにさし出した。スネイプがしぶしぶ受け取って引ひっ張ぱった。大たい砲ほうのようなバーンという音がして、クラッカーは弾はじけ、ハゲタカの剥はく製せいをてっぺんに載のせた、大きな魔女の三角帽子ぼうしが現れた。
ハリーはまボねガ妖ー怪トのことを思い出し、ロンに目配めくばせして、二人でニヤリとした。スネイプは唇くちびるをぎゅっと結び、帽子をダンブルドアのほうに押しやった。ダンブルドアはすぐに自分の三角帽子を脱ぎ、それをかぶった。
「どんどん食べましょうぞ!」
ダンブルドアは、にっこりみんなに笑いかけながら促うながした。
ハリーがちょうどロースト・ポテトを取り分けている時、大おお広ひろ間まの扉とびらがまた開いた。トレローニー先生がまるで車しゃ輪りんがついているかのようにすーっと近づいてきた。お祝いわいの席にふさわしく、スパンコール飾りの緑のドレスを着ている。服のせいでますます、きらめく特大トンボに見えた。
「シビル、これはお珍めずらしい!」ダンブルドアが立ち上がった。
「校長先生、あたくし水すい晶しょう玉だまを見ておりまして」
トレローニー先生が、いつもの霧きりのかなたからのようなか細い声で答えた。
「あたくしも驚きましたわ。一人で昼食をとるという、いつものあたくしを捨すて、みなさまとご一いっ緒しょする姿が見えましたの。運命があたくしを促しているのを拒こばむことができまして? あたくし、取り急ぎ、塔とうを離はなれましたのでございますが、遅おくれまして、ごめんあそばせ……」
「それは、それは」
ダンブルドアは目をキラキラさせた。
「椅い子すをご用意いたさねばのう――」
ダンブルドアは杖つえを振り、空中に椅子を描えがき出した。椅子は数秒間くるくると回転してから、スネイプ先生とマクゴナガル先生の間に、トンと落ちた。しかし、トレローニー先生は座ろうとしなかった。巨大な目玉でテーブルをずいーっと見渡みわたしたとたん、小さくあっと悲鳴ひめいのような声を漏もらした。