学校は次の週から始まった。震ふるえるような一月の朝に、戸外で二時間の授じゅ業ぎょうを受けるのは、誰だってできれば勘かん弁べんしてほしい。しかし、ハグリッドは大きな焚たき火びの中に火トカゲサラマンダーをたくさん集めて、生徒を楽しませた。みんなで枯かれ木や枯れ葉を集めて、焚き火を明あか々あかと燃やし続け、炎大好きの火トカゲは白はく熱ねつした薪たきぎが燃え崩くずれる中をチョロチョロ駆かけ回り、その日はめずらしく楽しい授業になった。それに引き替かえ、「占うらない学がく」の新学期第一日目は楽しくはなかった。トレローニー先生は今度は手相を教えはじめたが、いちはやく、これまで見た手相の中で生せい命めい線せんが一番短いとハリーに告げた。
「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ」、これこそハリーが始まるのを待ちかねていたクラスだった。ウッドと話をしてからは、一いっ刻こくも早く吸魂鬼ディメンター防衛術の訓くん練れんを始めたかった。
授業のあと、ハリーはルーピン先生にこの約束のことを思い出させた。
「ああ、そうだったね。そうだな……木曜の夜、八時からではどうかな? 『魔ま法ほう史し』の教室なら広さも十分ある……どんなふうに進めるか、私も慎しん重ちょうに考えないといけないな……本物の吸魂鬼を城の中に連れてきて練習するわけにはいかないし……」
夕食に向かう途と中ちゅう、二人で廊下ろうかを歩きながら、ロンが言った。
「ルーピンはまだ病気みたい。そう思わないか? いったいどこが悪いのか、君、わかる?」
二人のすぐ後ろで、イライラしたように大きく舌打ちする音が聞こえた。ハーマイオニーだった。鎧よろいの足元に座り込こんで、本でパンパンになって閉まらなくなったカバンを詰つめ直していた。
「なんで僕たちに向かって舌打ちなんかするんだい?」ロンがイライラしながら言った。
「何でもないわ」カバンをよいしょと背せ負おいながら、ハーマイオニーがとりすました声で言った。
「いや、なんでもあるよ」ロンが突っかかった。
「僕ぼくが、ルーピンはどこが悪いんだろうって言ったら、君は――」
「あら、そんなこと、わかりきったことじゃない?」
癪しゃくに障さわるような優ゆう越えつ感かんを漂ただよわせて、ハーマイオニーが言った。
「教えたくないなら、言うなよ」ロンがピシャッと言った。
「あら、そう」ハーマイオニーは高こう慢まんちきにそう言うと、つんつんと歩き去った。
「知らないくせに」ロンは憤ふん慨がいして、ハーマイオニーの後ろ姿を睨にらみつけた。
「あいつ、僕たちにまた口を利きいてもらうきっかけがほしいだけさ」