「父さんの声が聞こえた」ハリーは口ごもった。「父さんの声は初めて聞いた。――母さんが逃げる時間を作るのに、独ひとりでヴォルデモートと対決しようとしたんだ……」
ハリーは突とつ然ぜん、冷ひや汗に混じって涙が顔を伝うのに気づいた。ハリーはできるだけ顔を低くして、靴くつの紐ひもを結んでいるふりをしながら、涙をローブで拭ぬぐい、ルーピンに気づかれないようにした。
「ジェームズの声を聞いた?」ルーピンの声に不思議な響きがあった。
「ええ……」涙を拭ふき、ハリーは上を見た。「でも――先生は僕の父をご存知ぞんじない、でしょう?」
「わ――私は――実は知っている。ホグワーツでは友達だった。さあ、ハリー――今夜はこのぐらいでやめよう。この呪じゅ文もんはとてつもなく高度だ……言うんじゃなかった。君にこんなことをさせるなんて……」
「違います!」ハリーは再び立ち上がった。
「僕、もう一度やってみます! 僕の考えたことは、十分に幸せなことじゃなかったんです。きっとそうです……ちょっと待って……」
ハリーは必死ひっしで考えた。本当に、本当に幸せな想おもい出……しっかりした、強い守護霊パトローナスに変えることができる想い出……。
初めて自分が魔法使いだと知った時、ダーズリー家けを離はなれてホグワーツに行くとわかった時! あの想い出が幸せと言えないなら、何が幸せと言えよう。……プリベット通りを離れられるとわかった時の、あの気持に全ぜん神しん経けいを集中させ、ハリーは立ち上がって、もう一度箱と向き合った。
「いいんだね?」ルーピンはやめたほうがよいのでは、という思いをこらえているような顔だった。
「気持を集中させたね? 行くよ――それ!」
ルーピンは三度みたび、箱のふたを開けた。吸魂鬼ディメンターが中から現れた。部屋が冷たく暗くなった――。
「エクスペクト・パトローナム!」ハリーは声を張はりあげた。
「守護霊パトローナスよ来たれ! エクスペクト・パトローナム!」
“我听见我爸的声音了,”哈利低声咕哝道,“这是我第一次听到他—— 他设法自己对抗伏地魔,让我妈有时间逃.’
’哈利突然明白自己脸上泪水和汗水混在了一起。他尽量低头,在袍子上擦干泪水和汗水,假装是在系鞋带,不让卢平看见。
“你听到詹姆了?”卢平问,声音很怪。
“是的......”脸擦干了,哈利抬起头来。“啊—— 你不认识我爸,对不对?”
“我—— 说实话,我认识,”卢平说,“在霍格沃茨我们是朋友。听着,哈利—— 也许我们今天应该到此为止。这种魔咒太高深了......我不应该建议你经历这些事情......”
“不!”哈利说。他又站了起来。“我要再试一次!我想的事情不够快乐,所以才会这样子......坚持下去......”
他又搜索枯肠。真正快乐的回忆......他能够使之化为一个好的、强大的守护神的回忆......他第一次发现自己是巫师,而且要离开德思礼一家到霍格沃茨来上学!如果这还不是快乐的回忆的话,他就不知道什么才是快乐的回忆了......他努力回忆他知道自己要离开德思礼家时的感觉,哈利站起来,再次面对那个包装箱。
“准备好了吗?”卢平说,看上去好像这样做是违背了他的正确判断似的。
“努力集中想了吗?好—— 开始!”他第三次揭开了包装箱的盖子,摄魂怪从箱子里升起,寒冷和黑暗充满了教室——
“呼神护卫!”哈利大吼道,“呼神护卫!呼神护卫!”