知らぬ間に一月が過ぎ、二月になった。相変あいかわらず厳きびしい寒さが続いた。レイブンクロー戦がどんどん近づいてきたが、ハリーはまだ新しい箒を注文していなかった。「変へん身しん術じゅつ」の授じゅ業ぎょうのあとで、ハリーは毎回マクゴナガル先生にファイアボルトがどうなったか尋たずねるようになっていた。ロンはもしやの期待を込めてハリーの傍かたわらに立ち、ハーマイオニーはそっぽを向いて急いでその脇わきを通り過ぎた。
「いいえ、ポッター、まだ返すわけにはいきません」
十二回もそんなことがあったあと、マクゴナガル先生は、ハリーがまだ口を開きもしないうちにそう答えた。
「普通の呪のろいは大おお方かた調べ終わりました。ただし、フリットウィック先生が、あの箒には『うっちゃりの呪い』がかけられているかもしれないとお考えです。調べ終わったら、私わたくしからあなたにお教えします。しつこく聞くのは、もういい加減かげんにおやめなさい」
さらに悪いことに、吸魂鬼ディメンター防ぼう衛えい術じゅつの訓練は、なかなかハリーが思うようにうまくは進まなかった。何回か訓練が続き、ハリーはボガート・吸魂鬼が近づくたびに、もやもやした銀色の影かげを創つくり出せるようになっていた。しかし、ハリーの守護霊パトローナスは吸魂鬼を追い払うにはあまりに儚はかなげだった。せいぜい半はん透とう明めいの雲のようなものが漂ただようだけで、なんとかその形をそこに留とどめようとがんばると、ハリーはすっかりエネルギーを消しょう耗もうしてしまうのだった。ハリーは自分自身に腹が立った。両親の声をまた聞きたいと密ひそかに願っていることを恥じていた。