ロンを元気づける最後の手段で、ハリーはレイブンクロー戦を控ひかえたグリフィンドール・チームの最後の練習にロンを誘さそい、練習のあとでファイアボルトに乗ってみたら、と言った。これはロンの気持を、わずかの間スキャバーズから離はなれさせたようだ(「やった! それに乗ってゴールに二、三回シュートしてみていい?」)。そこで、二人一いっ緒しょにクィディッチ競きょう技ぎ場じょうに向かった。
フーチ先生は、ハリーを見み張はるため、いまだにグリフィンドールの練習を監視かんししていたが、生徒に負けず劣らずファイアボルトに感かん激げきした。練習開始前に箒ほうきを両手に取り、プロとしての蘊うん蓄ちくを傾けた。
「このバランスのよさはどうです! ニンバス系けいの箒に問題があるとすれば、それは尾の先せん端たんにわずかの傾けい斜しゃがあることですね。――数年も経たつと、これが抵てい抗こうになってスピードが落ちることがあります。柄えの握にぎりも改かい善ぜんされていますね。クリーンスイープ系より少し細身で、昔の「銀の矢シルバー・アロー」系を思い出します。――なんで生産中止になったのか、残念です。わたしはあれで飛ぶことを覚えたのですよ。あれはとてもいい箒だったわねぇ……」
こんな調子が延えん々えんと続いたあと、ウッドがついに言った。
「あの――フーチ先生? ハリーに箒を返していただいてもいいですか? 実は練習をしないといけないんで……」
「ああ――そうでした――はい、ポッター、それじゃ。わたしは向こうでウィーズリーと一いっ緒しょに座っていましょう……」
フーチ先生はロンと一緒にピッチを離はなれ、観かん客きゃく席せきに座った。グリフィンドール・チームはウッドの周まわりに集まり、明日の試合に備そなえてウッドの最後の指示を聞いた。