「ハリー、ここに置けよ」
ウッドはファイアボルトをテーブルの真ん中に置き、銘めいの刻こく印いんされているほうを丁てい寧ねいに上に向けた。レイブンクローやハッフルパフのテーブルからは、次々とみんなが見にきた。セドリック・ディゴリーは、ハリーのところにやってきて、ニンバスの代わりにこんなすばらしい箒ほうきを手に入れておめでとうと祝しゅく福ふくした。パーシーのガールフレンドでレイブンクローのペネロピー・クリアウォーターは、ファイアボルトを手に取ってみてもいいかと聞いた。
「ほら、ほら、ペニー、壊こわすつもりじゃないだろうな」
ペネロピーがファイアボルトをとっくり見ていると、パーシーは元気よく言った。
「ペネロピーと僕ぼくとで賭かけたんだ」パーシーがチームに向かって言った。「試合の勝敗に金貨きんかで十ガリオン賭けたぞ!」
ペネロピーはファイアボルトをテーブルに置き、ハリーに礼を言って自分の席に戻もどった。
「ハリー――絶ぜっ対たい勝てよ」パーシーが切せっ羽ぱ詰つまったように囁ささやいた。「僕、十ガリオンなんて持ってないんだ。――うん、いま行くよ、ペニー!」そしてパーシーはあたふたとペネロピーのところへ行き、一いっ緒しょにトーストを食べた。
「その箒、乗りこなす自信があるのかい、ポッター?」冷たい、気取った声がした。
ドラコ・マルフォイが、近くで見ようとやってきた。クラッブとゴイルがすぐ後ろにくっついている。
「ああ、そう思うよ」ハリーがさらりと言った。
「特とく殊しゅ機き能のうがたくさんあるんだろう?」マルフォイの目が、意い地じ悪わるく光っている。「パラシュートがついてないのが残念だなぁ――吸魂鬼ディメンターがそばまで来たときのためにね」
クラッブとゴイルがクスクス笑った。
「君こそ、もう一本手をくっつけられないのが残念だな、マルフォイ」ハリーが言った。「そうすりゃ、その手がスニッチを捕つかまえてくれるかもしれないのに」
グリフィンドール・チームが大声で笑った。マルフォイの薄うす青あおい目が細くなり、それから、肩をいからせてゆっくり立ち去った。マルフォイがスリザリン・チームのところに戻もどると、選手全員が額ひたいをよせ合った。マルフォイに、ハリーの箒が本物のファイアボルトだったかどうかを尋たずねているに違いない。