その夜よ、グリフィンドール塔とうでは誰も眠れなかった。再び城が捜そう索さくされているのをみんな知っていた。全員が談だん話わ室しつでまんじりともせずに、ブラック逮捕たいほの知らせを待った。マクゴナガル先生が明け方に戻もどってきて、ブラックがまたもや逃げ遂おおせたと告げた。
次の日、どこもかしこも警けい戒かいが厳きびしくなっているのがわかった。フリットウィック先生は入口のドアというドアに、シリウス・ブラックの大きな写真を貼はって、人相を覚え込こませていた。フィルチは急に気ぜわしく廊下ろうかを駆かけずり回り、小さな隙間すきまからネズミの出入口まで、穴という穴に板を打ちつけていた。カドガン卿きょうはクビになり、元いた八階のさびしい踊おどり場に戻された。「太った婦人レディ」が帰ってきた。絵は見事な技術で修しゅう復ふくされていたが、「婦人レディ」はまだ神しん経けいを尖とがらせていて、護衛ごえいが強化されることを条件に、やっと職しょく場ば復ふっ帰きを承し知ょうちした。「婦人レディ」の警備けいびに無ぶ愛あい想そうなトロールが数人雇やとわれた。トロールは組になって廊下を往いったり来たりしてあたりを威嚇いかくし、ブーブー唸うなりながら、互いの棍こん棒ぼうの太さを競きそっていた。
四階の隻せき眼がんの魔女像が、警備もされず、ふさがれてもいないことがハリーは気になっていた。この像の内側に隠れた抜け道があることを知っているのは、フレッドとジョージの言うとおり、双子ふたごのウィーズリー――それにいまではハリー、ロン、ハーマイオニーも入るが――だけということになる。
「誰かに教えるべきなのかなぁ?」ハリーがロンに聞いた。
「ハニーデュークス店から入ってきたんじゃないって、わかってるじゃないか」ロンはまともに取り合わなかった。
「店に侵しん入にゅうしたんだったら、噂うわさが僕ぼくたちの耳に入ってるはずだろ」
ハリーは、ロンがそういう考え方をしたのがうれしかった。もし隻眼の魔女までふさがれてしまったら、二度とホグズミードには行けなくなってしまう。