ハリーはここに一度だけ来たことがあったが、その時もひどく面めん倒どうなことに巻き込まれていた。あれ以来、スネイプは気き味みの悪いヌメヌメした物の瓶詰びんづめをまたいくつか増やしていた。机の後ろの棚たなにずらりと並び、暖炉だんろの火を受けてキラリ、キラリと光って、威い圧あつ的てきなムードを盛もり上げていた。
「座りたまえ」
ハリーは腰掛かけたが、スネイプは立ったままだった。
「ポッター、マルフォイ君がたったいま、我わが輩はいに奇き妙みょうな話をしてくれた」
ハリーは黙だまっていた。
「その話によれば、『叫さけびの屋敷やしき』まで登っていったところ、ウィーズリーに出会ったそうだ。――一人でいたらしい」
ハリーはまだ黙ったままだった。
「マルフォイ君の言うには、ウィーズリーと立ち話をしていたら、大きな泥どろの塊かたまりが飛んできて、頭の後ろに当たったそうだ。そのようなことがどうやって起こりうるか、おわかりかな?」
「僕ぼく、わかりません。先生」ハリーは少し驚いた顔をしてみせた。
スネイプの目が、ハリーの目をグリグリと抉えぐるように迫せまった。まるでヒッポグリフとの睨にらめっこ状じょう態たいだった。ハリーは瞬まばたきをしないようがんばった。
「マルフォイ君はそこで異常な幻まぼろしを見たと言う。それが何であったのか、ポッター、想像がつくかな?」
「いいえ」今度は、無む邪じゃ気きに興きょう味みを持ったふうに聞こえるよう努力した。
「ポッター、君の首だった。空中に浮かんでいた」
長い沈ちん黙もくが流れた。
「マルフォイはマダム・ポンフリーのところに行ったほうがいいんじゃないでしょうか。変なものが見えるなんて――」
「ポッター、君の首はホグズミードでいったい何をしていたのだろうねえ?」
スネイプの口く調ちょうは柔らかだ。
「君の首はホグズミードに行くことを許されてはいない。君の体のどの部分も、ホグズミードに行く許可きょかを受けていないのだ」
「わかっています」一点の罪つみの意識いしきも恐れも顔に出さないよう、ハリーは突っ張ぱった。
「マルフォイはたぶん幻げん覚かくを――」
「マルフォイは幻覚など見てはいない」
スネイプは歯をむき出し、ハリーの座っている椅い子すの左右の肘掛ひじかけに手を掛けて顔を近づけた。顔と顔が三十センチの距離きょりに迫せまった。
「君の首がホグズミードにあったなら、体のほかの部分もあったのだ」
「僕ぼく、ずっとグリフィンドール塔とうにいました。先生に言われたとおり――」
「誰か証しょう人にんがいるのか?」
ハリーは何も言えなかった。スネイプの薄うすい唇くちびるが歪ゆがみ、恐ろしい笑みが浮かんだ。
“坐。”斯内普说。哈利坐下了。然而,斯内普仍旧站着。
“他告诉我,刚才他站在那里同韦斯莱说话,一大块泥砸到了他后脑上。你认为这件事是怎样发生的?”
哈利努力装出略感惊讶的样子。
“我不知道,教授。”
斯内普紧盯着哈利的眼睛看。这简直就像是努力要把一头鹰头马身有翼兽瞪得退却一样。哈利努力不眨一下眼睛。
“马尔福先生然后看到一个特别的鬼怪出现了。你能想象那是什么吗,波特?”
“那是你的脑袋,波特。在半空中浮动着。”长时间的沉默。
“有人能证明吗?”