ハーマイオニーは昼食にも来なかった。アップルパイを食べ終えるころ、「元気呪文」の効きき目も切れてきて、ハリーもロンも少し心配になってきた。
「マルフォイがハーマイオニーに何かしたんじゃないだろうな?」
グリフィンドール塔とうへの階段を急ぎ足で上りながら、ロンが心配そうに言った。
二人は警備けいびのトロールのそばを通り過ぎ、「太った婦人レディ」に暗あん号ごうを言い(「フリバティジベット」)肖しょう像ぞう画がの裏うらの穴をくぐり、談だん話わ室しつに入った。
ハーマイオニーはテーブルに「数かず占うらない学」の教科書を開き、その上に頭を載のせて、ぐっすり眠り込こんでいた。二人はハーマイオニーの両側に腰掛かけ、ハリーがそっと突つついてハーマイオニーを起こした。
「ど――どうしたの?」
ハーマイオニーは驚いて目を覚まし、あたりをキョロキョロと見回した。
「もう、クラスに行く時間? 今度は、な――何の授じゅ業ぎょうだっけ?」
「『占うらない学』だ。でもあと二十分あるよ。ハーマイオニー、どうして『呪じゅ文もん学がく』に来なかったの?」ハリーが聞いた。
「えっ? あーっ!」ハーマイオニーが叫んだ。「『呪文学』に行くのを忘れちゃった!」
「だけど、忘れようがないだろう? 教室のすぐ前まで僕ぼくたちと一いっ緒しょだったのに!」
「なんてことを!」
ハーマイオニーは涙なみだ声ごえになった。
「フリットウィック先生、怒ってらした? ああ、マルフォイのせいよ。あいつのことを考えてたら、ごちゃごちゃになっちゃったんだわ!」
「ハーマイオニー、言ってもいいかい?」
ハーマイオニーが枕まくら代わりに使っていた分厚ぶあつい「数かず占うらない学」の本を見下ろしながら、ロンが言った。
「君はパンク状じょう態たいなんだ。あんまりいろんなことをやろうとして」
「そんなことないわ!」
ハーマイオニーは目の上にかかった髪かみをかき上げ、絶ぜつ望ぼうしたような目でカバンを探した。
「ちょっとミスしたの。それだけよ! 私、いまからフリットウィック先生のところへ行って、謝あやまってこなくちゃ……。『占い学』のクラスでまたね!」