「あーら、まあ……『運命が知らせましたの』……どなたさまが試験をお出しになるの? あの人自身じゃない! なんて驚くべき予言よげんでしょ!」
ハーマイオニーは声を低くする配慮もせず言いきった。
トレローニー先生の顔は暗がりに隠れているので、聞こえたのかどうかわからなかった。ただ、聞こえなかったかのように、話を続けた。
「水晶占うらないは、とても高度な技術ですのよ」夢見るような口く調ちょうだ。
「球の無限の深しん奥おうを初めて覗のぞき込こんだ時、みなさまが初めから何かを『見る』ことは期待しておりませんわ。まず意識いしきと、外なる眼めとをリラックスさせることから練習を始めましょう」
ロンはクスクス笑いがどうしても止まらなくなり、声を殺すのに、握にぎり拳こぶしを自分の口に突っ込むありさまだった。
「そうすれば『内なる眼め』と超ちょう意識とが顕あらわれましょう。幸運に恵まれれば、みなさまの中の何人かは、この授じゅ業ぎょうが終わるまでには『見える』かもしれませんわ」
そこでみんなが作業に取りかかった。少なくともハリーには、水晶玉をじっと見つめていることがとてもアホらしく感じられた。心を空からにしようと努力しても、「こんなこと、くだらない」という思いがしょっちゅう頭をもたげた。しかも、ロンがしょっちゅうクスクス忍び笑いをするわ、ハーマイオニーは舌打ちばかりしているわで、どうしようもない。
「何か見えた?」
十五分ほど黙だまって水晶玉を見つめたあと、ハリーが二人に聞いた。
「ウン。このテーブル、焼やけ焦こげがあるよ」ロンは指差ゆびさした。「誰か蝋ろう燭そくをたらしたんだろな」
「まったく時間のむだよ」ハーマイオニーが歯を食いしばったままで言った。
「もっと役に立つことを練習できたのに。『元気の出る呪じゅ文もん』の遅おくれを取り戻もどすことだって――」