グリフィンドール寮りょう全体が、来きたるべき試合に取とり憑つかれていた。グリフィンドールが最後に優勝杯を取ったのは、伝でん説せつの人物、チャーリー・ウィーズリー(ロンの二番目の兄)がシーカーだった時だ。勝ちたいという気持では、寮生の誰も、ウッドでさえも、自分にはかなわないだろうとハリーは思った。ハリーとマルフォイの敵意てきいはいよいよ頂点に達していた。マルフォイはホグズミードでの泥投どろなげ事件をいまだに根に持っていたし、それ以上に、ハリーが処しょ罰ばつを受けずにうまくすり抜けたことで怒り狂っていた。ハリーは、レイブンクローとの試合でマルフォイが自分を破滅はめつさせようとしたことも忘れてはいなかったが、全校の面前でマルフォイをやっつけてやると決意したのは、何といってもバックビークのことがあるからだった。
試合前にこんなに熱くなったのは、誰の記憶きおくにも、初めてのことだった。休暇が終わったころは、チーム同士、寮同士の緊きん張ちょうが爆ばく発はつ寸すん前ぜんまで高まっていた。廊下ろうかのあちこちで小こ競ぜり合いが散さん発ぱつし、ついにその極きょく限げんで一大騒そう動どうが起こり、グリフィンドールの四年生と、スリザリンの六年生が耳から葱ねぎを生はやして、入院する騒ぎになった。
ハリーはとくにひどい目に遭あっていた。授じゅ業ぎょうに行く途と中ちゅうでは、スリザリン生が足を突き出してハリーを引っかけようとするし、クラッブとゴイルはハリーの行く先々に突とつ然ぜん現れ、ハリーが大おお勢ぜいに取り囲まれているのを見ては、残念そうにのっそりと立ち去るのだった。スリザリン生がハリーをつぶそうとするかもしれないと、ウッドは、どこに行くにもハリーを独ひとりにしないよう指令しれいを出していた。グリフィンドールは、寮を挙あげてこの使命を熱く受け止めたので、ハリーはいつもワイワイガヤガヤと大勢に取り囲まれてしまい、クラスに時間どおりに着くことさえできなかった。ハリーは自分の身よりファイアボルトが心配で、飛行していないときはトランクにしっかりしまい込こみ、休み時間になるとグリフィンドール塔とうに飛んで帰って、ちゃんとそこにあるかどうかを確かめることもしばしばだった。