試合前夜、グリフィンドールの談だん話わ室しつでは、いつもの活動がいっさい放棄ほうきされた。ハーマイオニーでさえ本を手放てばなした。
「勉強できないわ。とても集中できない」ハーマイオニーはピリピリしていた。
やたら騒がしかった。フレッドとジョージはプレッシャーを撥はねのけるため、いつもよりやかましく、元気がよかった。オリバー・ウッドは隅すみのほうでクィディッチ・ピッチの模型もけいの上に屈かがみ込こみ、杖つえで選手の人形を突つきながら、一人でブツブツ言っていた。アンジェリーナ、アリシア、ケイティの三人は、フレッドとジョージが飛ばす冗じょう談だんで笑っている。ハリーは騒ぎの中心から離はなれたところで、ロン、ハーマイオニーと一いっ緒しょに座り、明日のことは考えないようにしていた。なにしろ、考えるたびに、何かとても大きなものが胃い袋ぶくろから逃げ出したがっているような恐ろしい気分になるからだ。
「絶ぜっ対たい、大だい丈じょう夫ぶよ」ハーマイオニーはそう言いながら、怖こわくてたまらない様子だ。
「君にはファイアボルトがあるじゃないか!」ロンが言った。
「うん……」そう言いながらハリーは胃が捩よじれるような気分だった。
ウッドが急に立ち上がり、一ひと声こえ叫さけんだのが救いだった。
「選手! 寝ねろ!」
ハリーは浅い眠りに落ちた。まず、寝すごした夢を見た。ウッドが叫んでいる。「いったいどこにいたんだ。代わりにネビルを使わなきゃならなかったんだぞ!」次に、マルフォイやスリザリン・チーム全員が、ドラゴンに乗って試合にやってきた夢を見た。マルフォイの乗ったドラゴンが火を吐はき、それを避よけてハリーは猛もうスピードで飛んでいた。が、ファイアボルトを忘れたことに気づいた。ハリーは落下し、驚いて目を覚ました。