「アンジェリーナ・ジョンソンがグリフィンドールにクアッフルを奪うばいました。行け、アンジェリーナ。行けーっ!」
ハリーはあたりを見回した。マルフォイ以外のスリザリン選手は、ゴール・キーパーも含めて全員、アンジェリーナを追って疾しっ走そうしていた。――全員でアンジェリーナをブロックする気だ――。
ハリーはくるりとファイアボルトの向きを変え、箒ほうきの柄えにぴったり張りつくように身を屈かがめて、前方めがけてキックした。まるで弾だん丸がんのように、ハリーはスリザリン・チームに突っ込こんだ。
「アアアアアアアーーーッ!」
ファイアボルトが突っ込こんでくるのを見て、スリザリン・チームは散り散りになった。アンジェリーナはノー・マーク状じょう態たいになった。
「アンジェリーナ、ゴール! アンジェリーナ、決めました! グリフィンドールのリード、八〇対二〇!」
ハリーはスタンドに真正面から突っ込みそうになったが、空中で急きゅう停てい止しし、旋せん回かいしてピッチの中心に向かって急いだ。
その時、ハリーは心臓が止まるようなものを見た。マルフォイが勝ち誇ほこった顔で急きゅう降こう下かしている――あそこだ。芝生しばふの一、二メートル上に、小さな金きん色いろにきらめくものが。
ハリーはファイアボルトを駆かって降下こうかした。しかし、マルフォイがはるかにリードしている。
「行け! 行け! 行け!」
ハリーは箒ほうきを鞭打むちうった。マルフォイに近づいていく……ボールがハリーめがけてブラッジャーを打ち込んだ。ハリーは箒の柄えにぴったり身を伏ふせた……マルフォイの踵かかとまで追いついた……並んだ――。
ハリーは両手を箒から放はなし、思いっきり身を乗り出した。マルフォイの手を払いのけた。そして――。
「やった!」
ハリーは急降下から反転し、空中高く手を突き出した。競きょう技ぎ場じょうが爆ばく発はつした。ハリーは観かん衆しゅうの上を高々と飛んだ。耳の中が奇き妙みようにジンジン鳴っている。しっかり握にぎりしめた手の中で、小さな金こん色じきのボールが羽をばたつかせてもがいているのを、指で感じた。