ファッジが答える前に、その背後の扉とびらを開けて、城の中から二人の魔法使いが現れた。一人はヨボヨボで、見ている目の前で萎しなび果てていくような大年寄り、もう一人は真っ黒な細い口くち髭ひげを生はやした、ガッチリと大おお柄がらの魔法使いだ。「危険きけん生せい物ぶつ処理しょり委い員いん会かい」の委員たちなのだろうとハリーは思った。大年寄りが目をしょぼつかせてハグリッドの小屋のほうを見ながら、か細い声でこう言ったからだ。
「やーれ、やれ、わしゃ、年じゃで、こんなことはもう……ファッジ、二時じゃったかな?」
黒髭の男はベルトに挟はさんだ何かを指でいじっていた。ハリーがよく見ると、太い親指でピカピカの斧おのの刃を撫なで上げていた。ロンが口を開いて何か言いかけたが、ハーマイオニーがロンの脇わき腹ばらを小こ突づいて玄関ホールのほうへと顎あごで促うながした。
「なんで止めたんだ?」昼食を食べに大おお広ひろ間まに入りながら、ロンが怒って聞いた。
「あいつら、見たか? 斧まで用意してきてるんだぜ。どこが公こう正せい裁さい判ばんだって言うんだ!」
「ロン、あなたのお父さま、魔ま法ほう省しょうで働いてるんでしょ? お父さまの上じょう司しに向かって、そんなこと言えないわよ!」
ハーマイオニーはそう言いながらも、自分も相当まいっているようだった。
「ハグリッドが今度は冷れい静せいになって、ちゃんと弁護べんごしさえすれば、バックビークを処しょ刑けいできるはずないじゃない……」
ハーマイオニー自身、自分の言っていることを信じてはいないことが、ハリーにはよくわかった。周まわりではみんなが昼食を食べながら、午後には試験しけんが全部終わるのを楽しみに、興こう奮ふんしてはしゃいでいた。しかし、ハリーとロン、ハーマイオニーは、ハグリッドとバックビークのことが心配で、とてもはしゃぐ気にはなれなかった。