バーン!
スネイプの杖から細い紐ひもが蛇へびのように噴ふき出て、ルーピンの口、手首、足首に巻きついた。ルーピンはバランスを崩くずし、床に倒れて、身動きできなくなった。怒りの唸うなり声をあげ、ブラックがスネイプを襲おそおうとした。しかし、スネイプはブラックの眉間みけんにまっすぐ杖を突きつけた。
「やれるものならやるがいい」スネイプが低い声で言った。
「我わが輩はいにきっかけさえくれれば、確実に仕し留とめてやる」
ブラックはぴたりと立ち止まった。二人の顔に浮かんだ憎にくしみは、甲こう乙おつつけがたい激はげしさだった。
ハリーは金かな縛しばりにあったようにそこに突っ立っていた。誰を信じてよいかわからなかった。ロンとハーマイオニーをちらりと見た。ロンも、ハリーと同じくらいわけがわからない顔をして、ジタバタもがくスキャバーズを押さえつけるのに奮ふん闘とうしていた。しかし、ハーマイオニーはスネイプのほうにおずおずと一歩踏ふみ出し、恐こわ々ごわ言った。
「スネイプ先生――あの――この人たちの言い分を聞いてあげても、害はないのでは、あ、ありませんか?」
「ミス・グレンジャー。君は停てい学がく処しょ分ぶんを待つ身ですぞ」
スネイプが吐はき出すように言った。
「君も、ポッターも、ウィーズリーも、許きょ容ようされている境きょう界かい線せんを越こえた。しかもお尋たずね者の殺さつ人じん鬼きや人じん狼ろうと一いっ緒しょとは。君も一生に一度ぐらい、黙だまっていたまえ」
「でも、もし――もし、誤解ごかいだったら――」
「黙れ、このバカ娘!」
スネイプが突とつ然ぜん狂ったように、喚わめきたてた。
「わかりもしないことに口を出すな!」
ブラックの顔に突きつけたままのスネイプの杖つえ先さきから、火花が数個パチパチと飛んだ。ハーマイオニーは黙りこくった。