ブラックが厳きびしく言った。ロンは痛みでいっそう蒼そう白はくになりながら、折おれた足を、ペティグリューの手の届かないところへと捻ねじった。ペティグリューは膝ひざを折ったまま向きを変え、前にのめりながらハーマイオニーのローブの裾すそをつかんだ。
「やさしいお嬢じょうさん……賢かしこいお嬢さん……あなたは――あなたならそんなことをさせないでしょう……助けて……」
ハーマイオニーはローブを引ひっ張ぱり、しがみつくペティグリューの手からもぎ取り、怯おびえきった顔で壁かべ際ぎわまで下がった。
ペティグリューは、止めどなく震ふるえながら、跪ひざまずき、ハリーに向かってゆっくりと顔を上げた。
「ハリー……ハリー……君はお父さんに生き写しだ……そっくりだ……」
「ハリーに話しかけるとは、どういう神しん経けいだ?」ブラックが大声を出した。
「ハリーに顔向けができるか? この子の前で、ジェームズのことを話すなんて、どの面つら下げてできるんだ?」
「ハリー」
ペティグリューが両手を伸ばし、ハリーに向かって膝ひざで歩きながら囁ささやいた。
「ハリー、ジェームズならわたしが殺されることを望まなかっただろう……ジェームズならわかってくれたよ、ハリー……ジェームズならわたしに情けをかけてくれただろう……」
ブラックとルーピンが大おお股またにペティグリューに近づき、肩をつかんで床の上に仰向あおむけに叩たたきつけた。ペティグリューは座り込こんで、恐きょう怖ふにひくひく痙けい攣れんしながら二人を見つめた。
「おまえは、ジェームズとリリーをヴォルデモートに売った」
ブラックも体を震わせていた。
「否定ひていするのか?」
ペティグリューはわっと泣きだした。おぞましい光景だった。育ちすぎた、頭の禿はげかけた赤ん坊が、床の上ですくんでいるようだった。