「玄関ホールを横切る足音だわ……そう、たぶん、私たちがハグリッドの小屋に行くところよ!」
「つまり」ハリーが囁ささやいた。
「僕ぼくたちがこの中にいて、しかも外にも僕たちがいるってこと?」
「そうよ」ハーマイオニーの耳はまだ戸に張はりついている。
「絶ぜっ対たい私たちだわ……あの足音は多くても三人だもの……それに、私たち『透とう明めいマント』をかぶってるから、ゆっくり歩いているし――」
ハーマイオニーは言葉を切って、じっと耳を澄すました。
「私たち、正面の石段を下りたわ……」
ハーマイオニーは逆さかさにしたバケツに腰掛かけ、ピリピリ緊きん張ちょうしていた。ハリーはいくつか答えがほしかった。
「その砂すな時ど計けいみたいなもの、どこで手に入れたの?」
「これ、『逆転時計タイムターナー』っていうの」ハーマイオニーが小声で言った。
「これ、今学期、学校に戻もどってきた日に、マクゴナガル先生にいただいたの。授じゅ業ぎょうを全部受けるのに、今学期、ずっとこれを使っていたわ。誰にも言わないって、マクゴナガル先生と固く約束したの。先生は魔ま法ほう省しょうにありとあらゆる手紙を書いて、私に一個入にゅう手しゅしてくださったの。私が模も範はん生せいだから、勉強以外には絶ぜっ対たいこれを使いませんって、先生は魔法省に、そう言わなければならなかったわ……。私、これを逆転させて、時間を戻していたのよ。だから、同時にいくつもの授業を受けられたの。わかった? でも……」
「ハリー、ダンブルドアが私たちに何をさせたいのか、私、わからないわ。どうして三時間戻せっておっしゃったのかしら? それがどうしてシリウスを救うことになるのかしら?」
ハリーは影かげのようなハーマイオニーの顔を見つめた。