ヒッポグリフはハグリッドのそばに行きたくて、必死ひっしになっていた。ハリーも手綱たづなをつかみ、バックビークを引き戻そうと引ひっ張ぱった。二人はハグリッドがほろ酔よいの千ち鳥どり足あしで城のほうに行くのを見ていた。ハグリッドの姿が見えなくなった。バックビークは逃げようと暴れるのをやめ、悲しそうに首うなだれた。
それからほんの二分も経たたないうちに、城の扉とびらが再び開き、スネイプが突とつ然ぜん姿を現し、「柳やなぎ」に向かって走りだした。
スネイプが木のそばで急に立ち止まり、周まわりを見回すのを、二人で見つめながら、ハリーは拳こぶしを握にぎりしめた。スネイプが「マント」をつかみ、持ち上げて見ている。
「汚けがらわしい手で触さわるな」ハリーは息をひそめ、歯は噛がみした。
「シッ!」
スネイプはルーピンが「柳」を固定するのに使った枝を拾い、それで木のコブを突き、「マント」をかぶって姿を消した。
「これで全部ね」ハーマイオニーが静かに言った。
「私たち全員、あそこにいるんだわ……さあ、あとは、私たちがまた出てくるまで待つだけ……」
ハーマイオニーは、バックビークの手綱の端はしを一番手近の木にしっかり結びつけ、乾かわいた土の上に腰を下ろし、膝ひざを抱きかかえた。
「ハリー、私、わからないことがあるの……どうして、吸魂鬼ディメンターはシリウスを捕つかまえられなかったのかしら? 私、吸魂鬼がやってくるところまでは覚えてるんだけど、それから気を失ったと思う……ほんとに大おお勢ぜいいたわ……」
ハリーも腰を下ろした。そして自分が見たことを話した。一番近くにいた吸魂鬼がハリーの口元に口を近づけたこと、その時大きな銀色の何かが、湖の向こうから疾しっ走そうしてきて、吸魂鬼を退たい却きゃくさせたこと。
説明し終わった時、ハーマイオニーの口元が微かすかに開いていた。