「でも、それ、なんだったの?」
「吸魂鬼ディメンターを追い払うものは、たった一つしかありえない」ハリーが言った。
「本物の守護霊パトローナスだ。強力な」
「でも、いったい誰が?」
ハリーは無言だった。湖の向こう岸に見えた人ひと影かげを、ハリーは思い返していた。あれが誰だと思ったか、ハリーは自分ではわかっていた……でも、そんなことがありうるだろうか?
「どんな人だったか見たの?」ハーマイオニーは興きょう味み津しん々しんで聞いた。
「先生の一人みたいだった?」
「ううん。先生じゃなかった」
「でも、本当に力のある魔法使いに違いないわ。あんなに大おお勢ぜいの吸魂鬼を追い払うんですもの……守護霊がそんなに眩まばゆく輝かがやいていたのだったら、その人を照らしたんじゃないの? 見えなかったの――?」
「ううん、僕ぼく、見たよ」ハリーがゆっくりと答えた。「でも……僕、きっと、思い込んだだけなんだ……混こん乱らんしてたんだ……そのすぐあとで気を失ってしまったし……」
「誰だと思ったの?」
「僕――」
ハリーは言葉を呑のみ込こんだ。言おうとしていることが、どんなに奇き妙みょうに聞こえるか、わかっていた。
「僕、父さんだと思った」
ハリーはハーマイオニーをちらりと見た。今度はその口が完全にあんぐり開いていた。ハーマイオニーはハリーを、驚きとも哀あわれみともつかない目で見つめていた。
「ハリー、あなたのお父さま――あの――お亡なくなりになったのよ」
ハーマイオニーが静かに言った。
「わかってるよ」ハリーが急いで言った。
「お父さまの幽ゆう霊れいを見たってわけ?」
「わからない……ううん……実物があるみたいだった……」
「だったら――」
「たぶん、気のせいだ。だけど……僕の見たかぎりでは……父さんみたいだった……。僕、写真を持ってるんだ……」
ハーマイオニーは、ハリーが正気を失ったのではないかと、心配そうに見つめ続けていた。
「バカげてるって、わかってるよ」
ハリーはきっぱりと言った。そしてバックビークのほうを見た。バックビークは虫でも探しているのか、土をほじくり返していた。しかし、ハリーは本当はバックビークを見ていたのではなかった。
“那么是谁召唤来的呢?”哈利什么也没说。他在回想他看见的湖对面的那个人。他知道他以为那是谁..但怎么可能呢?
“你看见他是什么样子的吗?”赫敏急切地问,“是哪个老师吗?”
“不是,”哈利说,“他不是老师。”