第22章 再びふくろう便 Owl Post Again
「ハリー!」
ハーマイオニーが時計を見ながらハリーの袖そでを引ひっ張ぱった。
「誰にも見つからずに病びょう棟とうまで戻もどるのに、十分きっかりしかないわ。――ダンブルドアがドアに鍵かぎを掛かける前に――」
「わかった」食い入るように空を見つめていたハリーが、やっと目を離はなした。
「行こう……」
背後のドアから滑すべり込こみ、二人は石いし造づくりの急な螺旋らせん階段を下りた。階段を下りきったところで人声がした。二人は壁かべにぴったりと身をよせて耳を澄すませた。ファッジとスネイプのようだ。階段下の廊下ろうかを、早足で歩いている。
「……ダンブルドアが四しの五ごの言わぬよう願うのみで」スネイプだ。「『キス』は直ちに執しっ行こうされるのでしょうな?」
「マクネアが吸魂鬼ディメンターを連れてきたらすぐにだ。このブラック事件は、始めから終わりまで、まったく面めん目ぼくまるつぶれだった。魔ま法ほう省しょうがやつをついに捕つかまえた、と『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん』に知らせてやるのが、私としてもどんなに待ち遠しいか……。スネイプ、新聞が君の記事をほしがると、私はそう思うがね……それに、あの青年、ハリーが正気に戻れば、『予言者新聞』に、君がまさにどんなふうに自分を助け出したか、話してくれることだろう……」
ハリーは歯を食いしばった。スネイプとファッジが二人の隠れている場所を通り過ぎる時、スネイプがにんまりしているのがちらりと見えた。二人の足音が遠ざかった。ハリーとハーマイオニーは、ちょっと間をおいて、二人が完全にいなくなったのを確かめ、それから、二人と反対の方向に走りだした。階段を一つ下り、二つ下り、また別の廊下を走り――その時、前方で、クァックァッと高笑いが聞こえた。