「僕ぼく、会いにいってくる」ハリーがロンとハーマイオニーに言った。
「でも、もし辞任じにんしたなら――」
「――もう私たちにできることはないんじゃないかしら――」
「かまうもんか。それでも僕、会いたいんだ。あとでここで会おう」
ルーピンの部屋のドアは開いていた。ほとんど荷造りがすんでいる。水魔グリンデローの水すい槽そうが空からっぽになっていて、そのそばに使い古されたスーツケースがふたを開けたまま、ほとんど一いっ杯ぱいになって置いてあった。ルーピンは机に覆おおいかぶさるようにして何かしていた。ハリーのノックで初めて顔を上げた。
「君がやってくるのが見えたよ」
ルーピンが微笑ほほえみながら、いままで熱心に見ていた羊よう皮ひ紙しを指さした。「忍しのびの地ち図ず」だった。
「いま、ハグリッドに会いました。先生がお辞やめになったって言ってました。嘘うそでしょう?」
「いや、本当だ」ルーピンは机の引き出しを開け、中身を取り出しはじめた。
「どうしてなんですか? 魔ま法ほう省しょうは、まさか先生がシリウスの手引きをしたなんて思っているわけじゃありませんよね?」
ルーピンはドアのところまで行って、ハリーの背後でドアを閉めた。
「いいや。私が君たちの命を救おうとしていたのだと、ダンブルドア先生がファッジを納なっ得とくさせてくださった」ルーピンはため息をついた。
「セブルスはそれでプッツンとキレた。マーリン勲くん章しょうをもらい損そこねたのが痛手だったのだろう。そこで、セブルスは――その――ついうっかり、今日の朝食の席で、私が狼おおかみ人にん間げんだと漏もらしてしまった」
「たったそれだけでお辞めになるなんて!」
ルーピンは自じ嘲ちょう的てきな笑いを浮かべた。