「ワームテールよ。俺様には頭のある人物が必要なのだ。揺ゆらぐことなき忠ちゅう誠せい心しんを持った者が。貴き様さまは、不幸にして、どちらの要件も満たしてはおらぬ」
「わたくしがあなた様を見つけました」
ワームテールの声には、こんどははっきりと口くち惜おしさが漂ただよっていた。
「あなた様を見つけたのはこのわたくしめです。バーサ・ジョーキンズを連れてきたのはわたくしめです」
「たしかに」別の声が、楽しむように言った。「わずかな閃ひらめき――ワームテール、貴様にそんな才さい覚かくがあろうとは思わなかったわ――しかし、本音を明かせば、あの女を捕らえたときには、どんなに役に立つ女か、おまえは気づいていなかったであろうが?」
「わ――わたくしめはあの女が役に立つだろうと思っておりました。ご主人様」
「嘘うそつきめが」声には残ざん酷こくな楽しみの色が、これまで以上にはっきりと出ていた。
「しかしながら、あの女の情報は価値があった。あれなくして我々の計画を練ることはできなかったであろう。そのことで、ワームテール、おまえには褒ほう美びを授さずけよう。俺様のために一つ重要な仕事を果たすことを許そう。我につき従う者の多くが、諸もろ手てを挙あげ、馳はせ参さんずるような仕事を……」
「ま、まことでございますか? ご主人様。どんな――?」ワームテールがまたしても怯おびえた声を出した。
「ああ、ワームテールよ。せっかく驚かしてやろうという楽しみを台だい無なしにする気か? おまえの役目は最後の最後だ……しかし、約束する。おまえはバーサ・ジョーキンズと同じように役に立つという名めい誉よを与えられるであろう」
「あ……あなた様は……」まるで口がカラカラになったかのように、ワームテールの声が突然かすれた。
「あなた様は……わたくしめも……殺すと?」
「ワームテール、ワームテールよ」冷たい声が猫ねこ撫なで声になった。
「なんでおまえを殺す? バーサを殺したのは、そうしなければならなかったからだ。俺様が聞き出だしたあとは、あの女は用よう済ずみだ。何の役にも立たぬ。いずれにせよあの女が魔ま法ほう省しょうに戻って、休きゅう暇か中ちゅうにおまえに出で会あったなどとしゃべったら、あの女は厄やっ介かいな疑ぎ念ねんを引き起こす羽は目めになったろう。死んだはずの魔法使いが片かた田舎いなかの旅はた篭ごで魔法省の魔女に出くわすなど、そんなことは起こらぬほうがよかろう……」
ワームテールは何か小声で呟つぶやいたが、フランクには聞き取れなかった。しかし別の声が笑った――話すときと同じく冷れい酷こくそのものの笑いだった。