リーが歌を聞くのに解説を中断したとき、スタンドの緑と銀のスリザリン陣営じんえいから、大きく、はっきりと歌声が立ち上がった。
♪ウィーズリーは守れない 万に一つも守れない
だから歌うぞ、スリザリン ウィーズリーこそ我が王者おうじゃ
♪ウィーズリーの生まれは豚ぶた小ご屋やだ いつでもクアッフルを見逃みのがしだ
おかげで我らは大勝利 ウィーズリーこそ我が王者
「――そしてアリシアからアンジェリーナにパスが返った」リーが叫さけんだ。
ハリーはいま聞いた歌に腸はらわたが煮にえくり返る思いで、軌道きどうを逸それてしまった。歌が聞こえないようにリーが声を張り上げているのがわかった。
「それ行け、アンジェリーナ――あとはキーパーさえ抜けば――シュートしました――シュー――ぁぁぁー……」
スリザリンのキーパー、ブレッチリーが、ゴールを守った。クアッフルをワリントンに投げ返し、ワリントンがボールを手に、アリシアとケイティの間をジグザグに縫ぬって猛進もうしんした。ワリントンがロンに迫せまるに従って、下からの歌声がだんだん大きくなった。
♪ウィーズリーこそ我が王者 ウィーズリーこそ我が王者
いつでもクアッフルを見逃しだ ウィーズリーこそ我が王者
ハリーは我慢がまんできずにスニッチを探すのをやめ、ファイアボルトの向きを変えて、ピッチの一番向こう端で、三つのゴールポストの前に浮かんでいる、独ひとりぼっちのロンの姿を見た。その姿に向かって、小山のようなワリントンが突進とっしんしていく。
「――そして、クアッフルはワリントンの手に。ワリントン、ゴールに向かう。ブラッジャーはもはや届かない。前方にはキーパーただ一人――」
スリザリンのスタンドから、大きく歌声がうねった。
♪ウィーズリーは守れない 万に一つも守れない……
「――さあ、グリフィンドールの新人キーパーの初はつ勝しょう負ぶです。ビーターのフレッドとジョージの弟、そしてチーム期待の新星しんせい、ウィーズリー――行けっ、ロン」
しかし、歓喜かんきの叫さけびはスリザリン側から上がった。ロンは両腕を広げ、がむしゃらに飛びついたが、クアッフルはその両腕の間を抜けて上昇し、ロンの守備しゅびする中央の輪わのど真ん中を通過つうかした。
「スリザリンの得点」リーの声が、観かん衆しゅうの歓声かんせいとブーイングに混じって聞こえてきた。
「一〇対〇でスリザリンのリード――運が悪かった、ロン」
スリザリン生の歌声がいちだんと高まった。
♪ウィーズリーの生まれは豚ぶた小ご屋やだ いつでもクアッフルを見逃みのがしだ……
「――そしてボールは再びグリフィンドールに戻りました。ケイティ・ベル、ピッチを力強く飛んでおります――」
いまや耳を劈つんざくばかりの歌声で、解説かいせつの声はほとんど掻かき消されていたが、リーは果敢かかんに声を張り上げた。
♪おかげで我らは大勝利 ウィーズリーこそ我が王者おうじゃ……