「『移動キー』って、どんなものなんですか?」ハリーは興味を引かれた。
「そうだな。何でもありだよ」ウィーズリーおじさんが答えた。
「当然、目立たないものだ。マグルが拾って、もてあそんだりしないように……マグルがガラクタだと思うようなものだ……」
一いっ行こうは村に向かって、暗い湿っぽい小道をただひたすら歩いた。静けさを破るのは、自分の足音だけだった。村を通り抜けるころ、ゆっくりと空が白しらみはじめた。墨すみを流したような夜空が薄うすれ、群ぐん青じょう色いろに変わった。ハリーは手も足も凍こごえついていた。おじさんが何度も時計を確かめた。
ストーツヘッド・ヒルを登りはじめると、息切れで話をするどころではなくなった。あちこちでウサギの隠れ穴につまずいたり、黒々と生おい茂しげった草の塊かたまりに足を取られたりした。一ひと息いき一息が、ハリーの胸に突つき刺ささるようだった。足が動かなくなりはじめたとき、やっとハリーは平らな地面を踏ふみしめた。
「フーッ」ウィーズリーおじさんは喘あえぎながらメガネをはずし、セーターで拭ふいた。
「やれやれ、ちょうどいい時間だ――あと十分ある……」
ハーマイオニーが最後に上ってきた。ハァハァと脇わき腹ばらを押さえている。
「さあ、あとは『移動キー』があればいい」ウィーズリーおじさんはメガネをかけ直し、目を凝こらして地面を見た。「そんなに大きいものじゃない……さあ、探して……」
一いっ行こうはバラバラになって探した。探しはじめてほんの二、三分もたたないうちに、大きな声がしんとした空気を破った。
「ここだ、アーサー! 息子や、こっちだ。見つけたぞ!」
丘の頂いただきの向こう側に、星空を背に長身の影が二つ立っていた。
「エイモス!」ウィーズリーおじさんが、大声の主のほうにニコニコと大おお股またで近づいていった。みんなもおじさんのあとに従った。