戸口に男が一人、テントのほうを眺ながめて立っていた。一ひと目め見て、ハリーは、この周辺数キロ四し方ほうで、本物のマグルはこの人一人だけだろうと察さっしがついた。足音を聞きつけて男が振り返り、こっちを見た。
「おはよう!」ウィーズリーおじさんが明るい声で言った。
「おはよう」マグルも挨あい拶さつした。
「ロバーツさんですか?」
「あいよ。そうだが」ロバーツさんが答えた。「そんで、おめえさんは?」
「ウィーズリーです――テントを二ふた張はり、二、三日前に予約しましたよね?」
「あいよ」ロバーツさんはドアに貼はりつけたリストを見ながら答えた。
「おめえさんの場所はあそこの森の端はただ。一いっ泊ぱくだけかね?」
「そうです」ウィーズリーおじさんが答えた。
「そんじゃ、いますぐ払ってくれるんだろうな?」ロバーツさんが言った。
「え――ああ――いいですとも――」
ウィーズリーおじさんは小屋からちょっと離れ、ハリーを手て招まねきした。
「ハリー、手伝っておくれ」ウィーズリーおじさんはポケットから丸めたマグルの札さつ束たばを引っ張り出し、一枚一枚はがしはじめた。
「これは――っと――十かね? あ、なるほど、数字が小さく書いてあるようだ――すると、これは五かな?」
「二十ですよ」ハリーは声を低めて訂てい正せいした。ロバーツさんが一いち言ごん一いっ句く聞き漏もらすまいとしているので、気が気ではなかった。
「ああ、そうか。……どうもよくわからんな。こんな紙切れ……」
「おめえさん、外国人かね?」ちゃんとした金きん額がくを揃そろえて戻ってきたおじさんに、ロバーツさんが聞いた。
「外国人?」おじさんはキョトンとしてオウム返しに言った。
「金かね勘かん定じょうができねえのは、おめえさんが初めてじゃねえ」
ロバーツさんはウィーズリーおじさんをじろじろ眺ながめながら言った。
「十分ほど前めえにも、二人ばっかり、車のホイールキャップぐれえのでっけえ金きん貨かで払おうとしたな」
「ほう、そんなのがいたかね?」おじさんはドギマギしながら言った。
ロバーツさんは釣つり銭せんを出そうと、四角い空あき缶かんをゴソゴソ探った。