ニッカーズを履いた魔法使いが、キャンプ場の入口までつき添そってくれた。疲れきった様子で、無ぶ精しょう髭ひげをはやし、目の下に濃こい隈くまができていた。ロバーツさんには聞こえないところまで来ると、その魔法使いがウィーズリーおじさんにボソボソ言った。
「あの男はなかなか厄やっ介かいでね。『忘ぼう却きゃく術じゅつ』を日に十回もかけないと機き嫌げんが保てないんだ。しかもルード・バグマンがまた困り者で。あちこち飛び回ってはブラッジャーがどうの、クアッフルがどうのと大声でしゃべっている。マグル安全対たい策さくなんてどこ吹く風だ。まったく、これが終わったら、どんなにほっとするか。それじゃアーサー、またな」
「姿すがたくらまし」術で、その魔法使いは消えた。
「バグマンさんて、『魔ま法ほうゲーム・スポーツ部ぶ』の部長さんでしょ?」ジニーが驚いて言った。「マグルのいるところでブラッジャーとか言っちゃいけないぐらい、わかってるはずじゃないの?」
「そのはずだよ」ウィーズリーおじさんは微ほほ笑えみながらそう言うと、みんなを引き連れてキャンプ場の門をくぐった。
「しかし、ルードは安全対策にはいつも、少し……何と言うか……甘いんでね。スポーツ部の部長としちゃ、こんなに熱心な部長はいないがね。なにしろ、自分がクィディッチのイングランド代表選手だったし。それに、プロチームのウイムボーン・ワスプスじゃ最高のビーターだったんだ」
霧の立ちこめるキャンプ場を、一いっ行こうは長いテントの列を縫ぬって歩き続けた。ほとんどのテントはごく当たり前に見えた。テントの主が、なるべくマグルらしく見せようと努力したことは確かだ。しかし、煙突をつけてみたり、ベルを鳴らす引き紐ひもや風かざ見み鶏どりをつけたところでボロが出ている。しかも、あちこちにどう見ても魔ま法ほう仕じ掛かけと思えるテントがあり、これではロバーツさんが疑うのも無理はないとハリーは思った。キャンプ場の真ん中あたりに、縞しま模も様ようのシルクでできた、まるで小さな城のような絢けん爛らん豪ごう華かなテントがあり、入口に生きた孔く雀じゃくが数羽つながれていた。もう少し行くと、三階建てに尖せん塔とうが数本立っているテントがあった。そこから少し先に、前庭つきのテントがあり、鳥の水みず場ばや日時計、噴ふん水すいまで揃そろっていた。