「ちょっと窮屈きゅうくつかもしれないよ」おじさんが中から呼びかけた。
「でも、みんな何とか入れるだろう。入って、中を見てごらん」
ハリーは身を屈かがめて、テントの入口をくぐり抜けた。そのとたん、口があんぐり開いた。ハリーは、古こ風ふうなアパートに入り込んでいた。寝しん室しつとバスルーム、キッチンの三部屋だ。おかしなことに、家か具ぐや置物が、フィッグばあさんの部屋とまったく同じ感じだ。不ふ揃ぞろいな椅子には、鉤かぎ針ばり編あみが掛かけられ、おまけに猫の臭いがプンプンしていた。
「あまり長いことじゃないし」
おじさんはハンカチで頭の禿はげたところをゴシゴシ擦こすり、寝室に置かれた四個の二段ベッドを覗のぞきながら言った。
「同僚どうりょうのパーキンズから借りたのだがね。やっこさん、気の毒にもうキャンプはやらないんだ。腰痛で」
おじさんは埃ほこりまみれのヤカンを取り上げ、中を覗のぞいて「水がいるな……」と言った。
「マグルがくれた地図に、水道の印があるよ」
ハリーに続いてテントに入ってきたロンが言った。テントの中が、こんなに不ふ釣つり合あいに大きいのに、何とも思わないようだった。
「キャンプ場の向こう端はしだ」
「よし、それじゃ、ロン、おまえはハリーとハーマイオニーの三人で、水を汲くみにいってくれないか――」ウィーズリーおじさんはヤカンとソース鍋なべを二つ三つよこした。
「――それから、ほかの者は薪まきを集めにいこう」
「でも、竈かまどがあるのに」ロンが言った。「簡単にやっちゃえば――?」
「ロン、マグル安全対たい策さくだ!」ウィーズリーおじさんは期待に顔を輝かがやかせていた。
「本物のマグルがキャンプするときは、外で火を熾おこして料理するんだ。そうやっているのを見たことがある!」