女子用テントをざっと見学してから――男子用より少し小さかったが、猫の臭いはしなかった――ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は、ヤカンとソース鍋をぶら下げ、キャンプ場を通り抜けていった。
朝日が初うい々ういしく昇り、霧も晴れ、いまはあたり一面に広がったテント村が見渡せた。三人は周りを見るのがおもしろくて、ゆっくり進んだ。世界中にどんなにたくさん魔法使いや魔女がいるのか、ハリーはやっと実感が湧わいてきた。これまでは他の国の魔法使いのことなど考えてもみなかった。
他のキャンパーも次々と起き出していた。最初にゴソゴソするのは、小さな子供のいる家族だ。ハリーはこんなに幼おさないチビッコ魔法使いを見たのは初めてだった。大きなピラミッド形のテントの前で、まだ二歳にもなっていない小さな男の子が、しゃがんで、うれしそうに杖つえで草地のナメクジを突っついていた。ナメクジは、ゆっくりとサラミ・ソーセージぐらいに膨ふくれ上がった。三人が男の子のすぐそばまで来ると、テントから母親が飛び出してきた。
「ケビン、何度言ったらわかるの? いけません。 パパの――杖に――さわっちゃ――きゃあ!」母親が巨大ナメクジを踏ふみつけ、ナメクジが破は裂れつした。母親の叱しかる声に混まじって、小さな男の子の泣き叫さけぶ声が、静かな空気を伝つたって三人を追いかけてきた――「ママがナメクジをつぶしちゃったぁ! つぶしちゃったぁ!」
そこから少し歩くと、ケビンよりちょっと年上のおチビ魔女が二人、おもちゃの箒ほうきに乗っているのが見えた。爪つま先さきが露つゆを含んだ草々をかすめる程度までしか上がらない箒だ。魔ま法ほう省しょうの役人が一人、さっそくそれを見つけて、ハリー、ロン、ハーマイオニーの脇わきを急いで通り過ぎながら、困こん惑わくした口調で呟つぶやいた。