「こんな明るい中で! 親は朝あさ寝ね坊ぼうを決め込んでいるんだ。きっと――」
あちこちのテントから、大人おとなの魔法使いや魔女が顔を覗のぞかせ、朝あさ餉げの支し度たくに取りかかっていた。何やらコソコソしていると思うと、杖で火を熾していたり、マッチを擦こすりながら、こんなことで絶対に火がつくものかと怪け訝げんな顔をしている者もいた。三人のアフリカ魔法使いが、全員白い長いローブを着て、ウサギのようなものを鮮あざやかな紫むらさきの炎ほのおで炙あぶりながら、まじめな会話をしていた。かと思えば、中年のアメリカ魔女たちが、テントとテントの間にピカピカ光る横おう断だん幕まくを張り渡し、その下に座り込んで楽しそうに噂うわさ話ばなしに耽ふけっていた。幕には「魔ま女じょ裁さい判ばんの町セーレムの魔女協会」と書いてある。テントを通り過ぎるたびに、中から聞き覚えのない言葉を使った会話が、断だん片ぺん的てきにハリーの耳に聞こえてきた。一言もわかりはしなかったが、どの声も興こう奮ふんしていた。
「あれっ――僕の目がおかしいのかな。それとも何もかも緑になっちゃったのかな?」ロンが言った。
ロンの目のせいではなかった。三人は、三みつ葉ばのクローバーでびっしりと覆おおわれたテントの群れに足を踏ふみ入れていた。まるで、変わった形の小山がニョッキリと地上に生はえ出したかのようだった。テントの入口が開いているところからは、住人がニコニコしているのが見えた。そのとき背はい後ごから誰かが三人を呼んだ。
「ハリー! ロン! ハーマイオニー!」
同じグリフィンドールの四年生、シェーマス・フィネガンだった。やはり三つ葉のクローバーで覆おおわれたテントの前に座っている。そばにいる黄おう土ど色いろの髪かみをした女性はきっと母親だろう。それに親友の、同じくグリフィンドール生のディーン・トーマスも一いっ緒しょだった。
三人はテントに近づいて挨あい拶さつした。